AutoCADは建築や設計、製図などの分野で広く使われているソフトウェアで、効率的な作業をサポートする機能が充実しています。そんなAutoCADを使っていく中で「操作を自動化したい」という考えにたどり着く方は多いでしょう。
自動化には特定の言語やツールが必要になるため、適切な手段を理解することが重要です。今回の記事では自動化の言語や手段、メリットや注意点を紹介しますので、ぜひ参考にして下さい。
AutoCADとは?
AutoCADはAutodesk社が開発したコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアで、主に建築、土木、機械、電気などの分野で使用されます。1982年に初めてリリースされて以来、業界標準のツールとして広く普及しています。
ユーザーは2Dおよび3Dの設計図面を作成・編集でき、直感的なインターフェースと強力な機能を備えています。図形の作成、編集、注釈の追加、データの共有など、さまざまな機能を提供しており、業務に欠かせない存在となっています。
またAutoCADはAPIを通じてカスタマイズや自動化が可能で、ユーザーは独自のアプリケーションを開発できます。よってより効率的な設計プロセスが実現されるだけでなく、さまざまなファイル形式に対応していることから、他のCADソフトウェアとの互換性も確保されています。
なお、AutoCADの基本操作やコマンドの書き方について深堀りしたい方は、以下の記事でくわしく解説していますので、ぜひご一読ください。
AutoCADを自動化できる技術・言語
この章では、AutoCADを自動化できる技術および言語として、とくに代表的なものを以下のとおりご紹介します。
技術・言語 | 概要 | 主な用途 | 難易度 |
AutoLISP |
|
作業の自動化およびカスタムコマンド作成 | 中 |
VBA (Visual Basic for Applications) |
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外部データとの連携および複雑な自動化処理 | 中~高 |
アクションレコーダー |
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繰り返し操作の簡易自動化 | 低 |
スクリプトファイル |
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シンプルなタスク自動化 | 低 |
技術・言語①AutoLISP
AutoLISPは、AutoCADの自動化やカスタマイズに特化したプログラミング言語であり、AutoCADに組み込まれています。LISP(LISt Processing)言語に基づいている、CAD図面の作成、編集、管理を効率化するための強力なツールです。
AutoLISPを使用することでユーザーは繰り返し作業を自動化し、特定のタスクを迅速に処理できるカスタム関数を作成できます。たとえば、図面の特定の要素を検索して変更したり、計算を行って自動的に注釈を追加したりすることが可能です。
AutoLISPはシンプルな構文を持つため、プログラミング初心者でも比較的かんたんに学ぶことができます。さらにAutoLISPで作成したプログラムは、AutoCADの他の機能と組み合わせて使用することができ、設計プロセスの効率を大幅に向上させることができます。
技術・言語②VBA
AutoCADを自動化言語として、VBA(Visual Basic for Applications)も挙げられます。Microsoft Office製品でよく使われるこちらの言語は、AutoCADの機能を拡張し、ユーザーが作成したマクロやカスタムツールを通じて図面の作成や編集作業を効率化できます。
VBAはユーザーがインターフェースを介して直接操作できる形でプログラミングを行えるため、非プログラマーでも比較的簡単に取り扱うことができます。AutoCAD内でVBAを使用すると図面のデータを読み込みや操作、特定のコマンドを自動化したりすることが可能です。
これにより時間のかかる手作業を削減し、エラーのリスクを低減させることができます。さらにVBAは他のOfficeアプリケーションとの連携も容易であり、ExcelなどのデータをAutoCADに取り込んで活用することもできます。
技術・言語③アクションレコーダー
アクションレコーダーは、AutoCADにおける自動化を支援するツールで、ユーザーが行った操作を記録して自動的に再生する機能を提供します。これにより特定の作業を繰り返し行う際に手動での操作を省力化し、作業の効率を大幅に向上させることができます。
アクションレコーダーを使用すると、図面の作成や編集に関する一連の手順を記録してマクロとして保存できます。ユーザーは記録されたアクションを後で再生し、同じ操作を瞬時に再現することが可能です。
この機能はとくに定型的な作業やルーチン作業において効果的で、大きな時間の節約につながります。また記録したアクションは他のユーザーと共有することもできるため、チーム内での作業効率をさらに高めることができます。
技術・言語④スクリプトファイル
スクリプトファイルは、AutoCADにおける自動化を実現するための非常に便利な技術です。こAutoCADのコマンドや操作を一連の指示としてテキスト形式で記述したファイルのことで、拡張子は通常「.scr」となります。
ユーザーはスクリプトファイルを作成し、必要なコマンドを順次記載することで、複雑な作業を自動化することができます。たとえば特定の図形を描画したり、レイヤーを設定したりする操作などです。
またスクリプトファイルはテキストエディタで簡単に編集できるため、修正や再利用が容易。AutoCADの操作の効率性を向上させ、作業フローの改善につながります。
なお、AutoCADの自動化にあたっては、ショートカットコマンドを覚えておくに越したことはありません。以下の記事では便利なコマンド21選、ショートカットキー10種類を紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
AutoCADを自動化するメリット
AutoCADを自動化するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 面倒なタスクが一瞬で片付く
- オリジナルのカスタムを楽しめる
それぞれ見ていきましょう。
AutoCAD自動化のメリット①面倒なタスクが一瞬で片付く
AutoCADを自動化する最大のメリットの一つは、面倒なタスクを一瞬で片付けられる点です。
設計や図面作成のプロセスでは、繰り返し行う作業が多く存在します。これらの作業を手動で行うと時間と労力を浪費し、ミスのリスクも高まります。
そこで自動化を活用することで、面倒なタスクを一瞬で一層できます。たとえば特定の図形の描画や属性の変更、レイヤー管理などをスクリプトやマクロで自動化することで、作業時間を大幅に短縮でき、設計者はより創造的な業務に集中できるようになるでしょう。
また自動化によって作業の均一性が確保され、結果として品質の向上にもつながります。いまや自動化は業務の生産性を向上させ、エラーを削減するために必須の手段です。
AutoCAD自動化のメリット②オリジナルのカスタムを楽しめる
AutoCADの自動化は、ユーザーにオリジナルのカスタムを楽しむ機会を提供します。ユーザーは特定のプロジェクトやニーズに合わせて独自の機能やツールを作成できるため、作業環境を自分好みに最適化できます。
たとえばAutoLISPやVBAを使用して特定のコマンドやプロセスを自動化することで、独自のワークフローを構築できます。またアクションレコーダーやスクリプトファイルを活用すれば、繰り返し行う大量のタスクを簡単に設定でき、必要に応じて変更することも可能です。
このように作業の効率化だけでなく、プロジェクトごとの柔軟な対応が可能になります。
AutoCAD自動化を学ぶ手段
AutoCAD自動化を学ぶための代表的な手段は、以下のようになります。
- 参考書やテキストを購入する
- ネットや動画コンテンツを活用する
- ITセミナーで効率よく学ぶ
それぞれ解説します。
AutoCAD自動化手段①参考書やテキストを購入する
参考書やテキストを購入することは、もっともオーソドックスなAutoCAD自動化の手段です。多くの書籍では、AutoLISPやVBAなどのプログラミング言語の基礎から応用まで、具体的なコード例とともに解説されているからです。
またレベルごとの段階にわけてチュートリアルが用意されているため、初心者でも理解しやすく、自分のペースで学習を進めることが可能です。
AutoCAD自動化手段②ネットや動画コンテンツを活用する
AutoCADの自動化を学ぶ手段として、ネットや動画コンテンツを活用する方法があります。インターネット上やYouTubeなどには、AutoCADの自動化に関するチュートリアルや実践的な解説が豊富にあります。
とくに動画はAutoCAD自動化を視覚的に学習できるため、複雑な操作やコードの理解における強力なサポートになるでしょう。
AutoCAD自動化手段③ITセミナーで効率よく学ぶ
AutoCADの自動化を学ぶ手段として、ITセミナーに参加する方法があります。セミナーでは実践的なスキルや最新のテクニックを短時間で効率的に学ぶことができます。
今回おすすめするのは、ProSkilllのAutoCAD自動化セミナーです。
このセミナーは、前述で紹介しましたAutoCADの操作を自動化するプログラミング言語「LISP」、「VBA」やスクリプトの活用方法を2日間で学べる内容となっています。
参加者は実際のプロジェクトに基づいたケーススタディを通じ、AutoCADの自動化機能を直接体験しながら理解を深めることができます。また、他の参加者とのネットワーキングを通じた情報交換やアイデアの共有によって、学びをさらに広げることも期待できるでしょう。
AutoCADの基礎を1から学びたい方は、ProSkilllが運営するAutoCAD基礎セミナー講習をおすすめします。
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AutoCADを自動化する際に注意すべきこと
AutoCADを自動化する際は、スクリプト設計に注意が必要です。十分なテストを行わないと、誤った自動化がミスを引き起こすリスクがあります。
とくに操作手順やデータ入力を誤ると、設計ミスや効率低下につながるため注意が必要です。また自動化の効果を最大限に引き出すためには、実際の業務フローに適したスクリプトを作成し、繰り返しテストを行うことが求められます。
安全で効果的な自動化を実現するため、慎重なアプローチを心がけましょう。
AutoCAD自動化まとめ
AutoCADの自動化は、作業効率を大幅に向上させる手段として非常に有効です。自動化には主にAutoLISPやVBAなどの技術が利用され、反復作業や複雑なプロセスを簡略化できます。
ただスクリプトの設計には、十分な理解とテストが必要で、誤った自動化はミスを引き起こす可能性があるため注意が必要です。適切な自動化を導入し、作業の質を保ちながら生産性を飛躍的にアップさせてほしいと思います。
