費用を抑えるために、無料のCADアプリを導入したいと考えていないでしょうか。
しかし、無料CADアプリによって商用利用の可否、DWG互換、セキュリティ、教育コストが異なるため、アプリ選びを見誤ると、後から有料CADアプリへ出戻りするケースもあります。
そこでこの記事では、企業が最初に確認すべき無料CADアプリの選び方や、目的や業界別におすすめのアプリを紹介します。導入の失敗を避けたい方は、ぜひ製品選択の参考にしてみてください。
企業が最初に知りたい無料CADアプリの選び方
企業がCAD無料アプリを検討する際、特に重要なのが「機能の多さ」ではなく業務に安全に組み込めるかという点です。
まずは、無料CADアプリを導入する企業が確認したいポイントを紹介します。
- 商用利用・ライセンス
- 2D・3D・BIMの対応状況
- DWGやDXFとの互換性
- 情報セキュリティへの影響
- 有料CADアプリとの違い
商用利用・ライセンス
無料CADアプリの種類によっては、商用利用が不可な場合があります。
たとえば、個人利用のみ無料であるアプリや、収益目的の場合は有料ライセンスが必要になるなど、提供されている無料CADアプリによって異なる条件が設けられている点に注意してください。
企業の場合、確実に商用利用が発生するため、事前に利用規約を確認しておきましょう。
2D・3D・BIMの対応状況
無料CADアプリを導入する際には、その製品が以下のどの機能に対応しているかチェックしましょう。
- 2D作図
- 3Dモデリング
- BIM
特に近年では、建築・土木だとBIMやCIM、製造では3Dモデル連携が標準化しています。
機能が一部だけに限られる無料CADアプリもあるため、将来の拡張なども見据えて、対応機能を確認してください。
DWGやDXFとの互換性
発注者や下請け、協力会社とのデータのやり取りが発生する際には、使用する拡張子との互換性があるかを見ておきましょう。
特にDWGやDXFといった拡張子は世界標準として用いられているCADファイル形式です。
関係者・関係企業にヒアリングを行い、出力できるデータとの互換性があるかを確認してください。互換が弱いと文字化け・線種欠落が発生しやすくなります。
情報セキュリティへの影響
無料CADアプリによっては、海外サーバーでの保存が標準になっている場合があり、機密情報の漏えいリスクがあります。
そのため、導入する際には社内ポリシーを満たしているかのチェックだけでなく、情報セキュリティマネジメントの国際規格である「ISO27001」に準拠できるか確認することが大切です。
無料CADアプリを選ぶ際には、信頼できるサーバーへ保存できるもの、オフライン保存に対応したものなどを選びましょう。
有料CADアプリとの違い
無料CADアプリによっては、実務での活用に限界がある製品も少なくありません。
そこで重要なのが、有料のCADアプリも比較に加えることです。
基本、無料のCADアプリは図面確認や簡単な作図を実行できますが、中~大規模プロジェクトや拡張、公式サポートなどに弱点があります。
そのため、規模の大きい設計プロジェクトでCADアプリを使いたいなら、将来的に有料版へ移行できる無料CADアプリを選ぶか、最初から有料版を導入するのが安心です。
おすすめの無料CADアプリ10選を徹底比較
無料CADアプリは年々進化しており、実務で使える水準の製品なども多く登場しています。
ただし目的をすべて満たせる「万能アプリ」はほぼ存在しないため、製品の特徴を見て、自社に最適なアプリを厳選することが大切です。
本項では、おすすめの無料CADアプリをデバイスに分けて10種類紹介します。
それぞれ比較表も掲載しているため、自社の要望にマッチする製品を探してみてください。
- PC向けの無料CADアプリ5選
- スマホ向けの無料CADアプリ5選
PC向けの無料CADアプリ5選

| アプリ名 | 機能 | 対応形式 | 商用 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Jw_cad | 2D | JWW・DXF | 〇 | 日本の業務で標準利用されている軽量な2DCADアプリ |
| FreeCAD | 3D | DWG・DXF・3MF・OBJなど | 〇 | Windows、Mac、Linuxを問わず動作するパラメトリック3Dモデリングアプリ |
| SketchUp Free | 3D | SKP・PNG・STLなど | ×(趣味や学習目的のみ) | Webブラウザで設計できる3Dモデリングアプリ |
| Fusion for Personal Use | 3D | DWG・DXF・3DM・3MF・FBXなど | ×(学習目的のみ) | 製造向けの3Dモデリングを行えるが、3年間の期限付き(それ以降は有償版へ移行) |
| RootPro CAD 12 Free | 2D | DWG・DXF・JWW・SXFなど | 〇 | 機械、建築、土木、電子などさまざまな分野の設計図を作成できる2DCADアプリ |
完全無料で利用できる2D・3DのCADアプリとしては「Jw_cad」「FreeCAD」「RootPro CAD 12 Free」の3種類があり、それぞれ商用利用が可能です。
一方で、有料版が一緒に提供されている「SketchUp Free」「Fusion for Personal Use」については、機能数が豊富な一方で、商用利用ができません。制限がやや多いため、個人利用や教育向けである点に注意してください。
スマホ向けの無料CADアプリ5選(iPhone・Android対応)

| アプリ名 | 機能 | iPhone (iOS) |
Android | 対応形式 | できること |
|---|---|---|---|---|---|
| CAD Pockets | 2D・3D | 〇 | 〇 | DWG、DWF、DXFなど | 閲覧・編集・共有 |
| DWG FastView | 2D・3D・BIM | 〇 | 〇 | DWG、DXFなど | 閲覧・編集・共有 |
| ZWCAD Mobile | 2D | 〇 | 〇 | DWG、DWF、DXFなど | 閲覧・編集・共有 |
| IJCAD Mobile | 2D | 〇 | × | DWG、DXF、JWWなど | 閲覧・編集・共有 |
| DWG TrueView | 2D・3D | 〇 | 〇 | DWG | 閲覧・共有 |
スマホアプリ版のCADは、メーカーごとに対応デバイスが異なるため、まずは自社で利用する社用スマホに対応しているのかをチェックしましょう。また、スマホアプリ上で編集ができる製品もありますが、PC版と比べて機能制限が多い点に注意してください。
また、Mac向けのCADアプリをお探しなら、以下の記事もおすすめです。
業界別に選ぶおすすめの無料CADアプリ一覧
無料CADアプリは、種類によって得意とする業界が異なります。
搭載されている機能も業界で変化するため、前述した10選のおすすめアプリのなかから、業界別におすすめな製品を整理しました。
- 土木・建築・設備業界向け
- 製造・製品業界向け
土木・建築・設備業界向けの無料CADアプリ

土木・建築・設備など「建設系」の業務で無料CADアプリを利用したいなら、以下の製品がおすすめです。
| 業界 | おすすめの無料CADアプリ (商用利用可のみ) |
|---|---|
| 建築 | Jw_cad、RootPro CAD 12 Free、CAD Pockets |
| 土木 | Jw_cad、RootPro CAD 12 Free、DWG FastView、CAD Pockets |
| 設備 | RootPro CAD 12 Free、IJCAD Mobile、CAD Pockets |
特に建設全般では、2DCADアプリのJw_cadとRootPro CAD 12 Freeが優秀です。
無料でありながら商用利用が可能であり、標準形式のDXFにも対応しています。
また、CAD Pocketsなどの編集機能付きの無料アプリと組み合わせれば、DWGなどへのデータ変換も行えるのが強みです。
ちなみに学習目的であれば、3DCADアプリのSketchUp Freeも向いています。
将来的に3Dモデリングへの対応が必要なら無料版からスタートしてみてはいかがでしょうか。
なお、Jw_cadの導入からスタートしたい方は、使い方や操作方法を学習するために、以下のセミナー講習で体系的な製品操作の基礎を学ぶのがおすすめです。プロ講師の説明や操作する画面を見ながら、実務での使い方を効率よく学べます。
| セミナー名 | Jw_cad基礎セミナー |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 27,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
製造・機械業界向けの無料CADアプリ

製造・機械業界向けの場合、それぞれ以下の無料CADアプリがおすすめです。
- FreeCAD(3D対応)
- RootPro CAD 12 Free(2D対応)
- DWG FastView(DWGデータの閲覧・共有)
- CAD Pockets(スマホ編集)
特にFreeCADは、近年の製造・機械業界の基本となる3Dモデリングに商用利用可で対応できます。C++やPythonといったプログラミング言語を用いて、マクロや独自ツールを作成することも可能です。
また、学習目的であれば、豊富なモデリング機能が搭載されてるFusion for Personal Useが最適です。以下のようなセミナー講習を利用すれば、初心者からすぐに実務で役立つ使い方や操作方法を学べます。
| セミナー名 | Autodesk Fusionセミナー講習 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 41,800円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
AutoCADにあわせた無料CADアプリの使い方

AutoCADと完全に同等の機能を持つ無料CADアプリは、現時点では確認されていません。ただし、特定の目的への対応であれば、AutoCADの代替品として以下の製品を利用できます。
| 目的 | 代替できる無料CADアプリ |
|---|---|
| 閲覧 | DWG TrueView |
| 簡易的な図面編集 | CAD Pockets、DWG FastView |
| 本格的な2D作図 | Jw_cad、RootPro CAD 12 Free |
| 本格的な3Dモデリング | FreeCAD |
たとえば、2DCADとしてAutoCADと同じように作図がしたいなら、Jw_cadを活用するのが便利です。以下のように、AutoCADでも利用できる2D作図や、レイヤー設定を行えます。

また、図面の閲覧だけならDWG TrueViewが便利です。
AutoCADで出力できるDWGデータを読み込めるほか、データ変換や寸法計測ができる、屋外でも気軽にデータチェックが行えます。

なお、上記のアプリはあくまで一例です。拡張や自動化など、部分的にはAutoCADの性能に届かないポイントもあるため、まずは製品を導入したうえで代替できそうなのかを判断しましょう。
また、AutoCADの機能や性能について知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
無料CADアプリでできること・できないこと
無料CADアプリは年々進化しており、すでに図面閲覧・2D作図・簡易な3Dモデリングであれば、有料CADアプリに負けない部分もあります。ですが一方で、企業での運用・中~大規模データの管理・高度な自動化といった部分には制限があります。
ここでは、無料CADアプリでできること・できないことの境界線について紹介します。
- 無料版で利用できる作業
- 無料版で制限される作業
無料版で利用できる作業
無料版のCADアプリでは、主に次のような作業を行えます。
- DWG・DXFの閲覧(DWG TrueView・DWG FastView)
- 2D作図(Jw_cad・RootPro CAD 12 Free)
- 3Dモデリング(FreeCAD・SketchUp Free)
- 現場での図面追記(CAD Pockets・IJCAD Mobile)
- 形式変換(DWG TrueView)
なお、すべての機能を使うためには、製品ごとに使い分ける必要があります。
1つの無料CADアプリですべての作業に対応できるわけではないため、前述した製品比較なども参考にしつつ、自社に必要なアプリを選定してみてください。
無料版で制限される作業
無料版のCADアプリでは、基本的に次の機能や作業などが行えません。
- 中~大規模プロジェクトへの活用
- 商用条件(特にSketchUp Free・Fusion for Personal Use)
- 高度な印刷設定
- 高度なレンダリング
- APIを用いた自動化
- 公式サポート・相談
なおFreeCADについては、プログラミング言語を用いることで、独自機能などを拡張できます。しかし、専門知識がなければ対応できないほか、バージョンアップごとに調整する手間がかかる点に注意が必要です。
無料CADアプリを導入する流れ(5STEP)
企業で無料CADアプリを導入する際には、入念な準備をすることで失敗を防止できます。
初めて導入するのなら、以下の手順をご参考ください。
- 目的と利用シーンを整理する
- 気になるCADアプリのライセンス・商用可否を確認する
- 実際にインストールしてテストする
- アプリの全体像を把握し運用ルールを作成する
- 社内で教育を行い実務へと展開する(マニュアルも作成する)
特に重要なのが、3番目のインストールです。無料であるため、一度インストールを行い、実務でうまく活用できるかをテストしましょう。実際に設計者等が利用してみることで、アプリの問題点や解決策などを見つけやすくなります。
無料CADアプリと有料CADアプリはどちらがいい?

無料CADアプリで2D作図や3Dモデリングが行えるため「無料のもので十分では?」と考える方も多いでしょう。しかし、図面の規模・チーム人数・責任によっては、有料CADアプリを導入したほうがいいケースも多くあります。
たとえば、無料のCADアプリには次の弱点があります。
- データ容量が重い図面を処理しづらい(できない)
- 詳細なデザインに対応できない場合がある
- 発注者が利用するアプリとの互換が低い場合がある
特に無料のものは、有料CADアプリと比べて最新機能のリリースやサポート面に劣るのがネックです。また、中~大規模設計などで対応する膨大なデータ容量の図面を処理できないことがあるため、規模が大きい設計ほど有料CADアプリのほうが向いています。
そのため、あくまで目安ですが、「1つのプロジェクトの図面作成枚数が数十枚になる」「複数チームで動く」「発注者や下請けなど、さまざまな人と関わる」といった条件にあてはまるなら無料ではなく有料CADアプリがおすすめです。
ただし、小規模な設計であれば無料CADアプリでも対応できます。
規模感ベースで判断すると、無料か有料かを選びやすくなるでしょう。
無料CADアプリについてまとめ
無料CADアプリは、企業で商用利用が必要なら、Jw_cadやRootPro CAD 12 Freeによる2D作図、FreeCADによる3Dモデリングで対応が可能です。ただし、無料であるがゆえに有料CADアプリと比べると機能数や使いやすさに劣る面も見つかります。
もし企業用としてCADを利用していく予定なら、目的に合うアプリをインストールし、問題なく使えるかを確認することからスタートしましょう。事前確認を行うことで、導入・運用後の失敗を防止できます。