DX人材を効率的かつ戦略的に育成する手段として、スキルマップの活用が注目を集めています。しかし、企業の育成担当者の中には「そもそもスキルマップって何?」「どうやって作ればいいの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、「DX人材スキルマップとは何か」から始まり、作り方、活用法、そして生成AI時代に求められる最新トレンドまでを徹底的に解説します。
この記事を参考に、自社のDXを加速させ、新しい価値を創造できる人材の育成に一歩踏み出しましょう。
DX人材とは
DX人材とは、デジタル技術を活用して業務の変革や新たな価値創出を推進できる人材を指します。
ITスキルが高い「IT人材」や、既存業務のデジタル化を担う「デジタル人材」とは異なり、DX人材はビジネス課題の本質を見極め、組織全体の変革をリードできる総合的なスキルとマインドを備えているのが特徴です。
ビジネス理解、変革マインド、データ利活用力などが重視され、技術と経営の橋渡しを担う存在として、近年では多くの業界で需要が高まっています。
DX人材の詳しい定義や必要なスキルセット、具体的な職種例などについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
DX人材育成に重要な「スキルマップ」とは

スキルマップとは、業務や職種に必要なスキルを一覧化し、個々の従業員がどのスキルをどの程度保有しているかを可視化するツールです。
特にDX人材の育成においては、幅広く複雑なスキルが求められるため、スキルマップを活用することで育成の方向性が明確になります。社員一人ひとりのスキルギャップを把握できることから、個別の育成計画や最適な配置の検討、さらには組織全体としての経営戦略や人材戦略の立案にも役立ちます。
DX人材のスキルマップを作成・活用するうえでは、専門的な視点や体系的な仕組みが求められる場面も少なくありません。自社だけで対応が難しいと感じた場合は、外部サービスを活用して効率化を図るのも有効な選択肢です。
スキルマップ作成にも役立つ「DX・AI人材育成研修サービス」はこちら
DX人材スキルマップの作り方

スキルマップの重要性が理解できたら、次は「実際にどのように作成すればいい?」というのが気になるところです。ここでは、DX人材に特化したスキルマップを作成するための基本的なステップをご紹介します。
| ステップ | 注意点 |
|---|---|
| ① DXの目的・戦略を明確にする |
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| ② 必要スキルを棚卸し・分類する |
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| ③ スキル項目ごとに評価レベルを設定する |
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| ④ 既存社員のスキルを自己評価・他者評価で記録する |
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| ⑤ スキルギャップを分析し、育成方針を策定する |
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| ⑥ スキルマップを継続的に更新・運用する体制を整備する |
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①DXの目的・戦略を明確にする
DX人材向けのスキルマップを作成する際、最初に行うべきなのが「DXの目的や戦略を明確にすること」です。
企業によってDXの目的は異なり、業務効率化を目指すのか、新規事業を創出するのかによって、求められるスキルや人材像も変わってきます。そのため、まずは自社がなぜDXを推進するのか、どの領域でどのような成果を期待しているのかを明確に言語化しましょう。
この段階を曖昧にしたままスキル設計を始めてしまうと、実際の業務や戦略とズレが生じ、効果的な育成につながらないため注意が必要です。
②必要スキルを棚卸し・分類する
DXの目的や戦略が明確になったら、次に取り組むべきは「必要なスキルの棚卸しと分類」です。
自社のDX推進に必要なスキルを洗い出し、業務領域ごとに整理していきましょう。例えば、データ分析、AI活用、クラウド運用といった技術スキルに加え、プロジェクトマネジメントや課題解決力、ビジネス理解などの非技術スキルも含めることが重要です。
このように役割別やレベル別にスキルを分類することで、どの職種にどのスキルが求められるのかが明確になります。
③スキル項目ごとに評価レベルを設定する
洗い出したスキル項目ごとに、評価レベルを設定します。
例えば「初級」「中級」「上級」など段階を明確に設け、それぞれのレベルに達するための基準や行動例を定義しましょう。これにより、単にスキルの有無を確認するだけでなく、どの程度習得しているかを定量的に評価できるようになります。
また、評価レベルを明確にすることで、従業員自身が自身の現在地と目標を把握しやすくなり、キャリア形成にも役立ちます。
④既存社員のスキルを自己評価・他者評価で記録する
DX人材スキルマップを活用するうえで欠かせないのが、既存社員のスキルを実際に評価・記録するプロセスです。
まずは本人による自己評価を行い、自身のスキルレベルを各項目ごとにチェックしてもらいましょう。その後、上司やチームリーダーなどによる他者評価を加えることで、より客観的で信頼性の高いデータが得られます。
自己評価だけでは過大評価や過小評価の偏りが出やすいため、他者の視点を取り入れることが重要です。これにより、個人の強みや成長の余地が明確になり、今後の育成方針にもつなげやすくなります。
⑤スキルギャップを分析し、育成方針を策定する
自己評価・他者評価の結果をもとに、現状のスキルと目標スキルの差分、いわゆる「スキルギャップ」を分析しましょう。
このギャップを可視化することで、どのスキルが不足しているのか、どの社員にどの育成が必要かが明確になります。ギャップの大きさや緊急度に応じて、短期的な施策と中長期的な育成戦略を組み合わせることが効果的です。
この分析結果をもとに、個人・チーム・組織全体の育成方針を策定することで、DX人材の計画的な成長が実現します。
⑥スキルマップを継続的に更新・運用する体制を整備する
スキルマップは一度作って終わりではなく、継続的な更新と運用が不可欠です。技術やビジネス環境は常に変化しており、それに応じて必要なスキルも進化するため、定期的にスキルマップを見直し、現場の状況や戦略に合わせて内容を更新する体制を整えましょう。
また、評価・育成のサイクルにスキルマップを組み込み、年次面談や人事評価の一環として活用することで、組織に定着させやすくなります。運用を定期化し、社内での理解と活用を促進することで、スキルマップはDX人材育成の有効な基盤として機能し続けます。
DX人材の育成施策として、資格取得を推進するのも有効な手段の一つです。おすすめの資格や選び方については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
DX人材育成にスキルマップを導入するメリット

スキルマップは、DX推進において「どのスキルが不足しているのか」を正確に把握するために有効です。ここでは、スキルマップを導入することで得られる主なメリットについてご紹介します。
- スキルを可視化できる
- 育成方針や研修計画を立てやすくなる
- 評価・キャリアパスの基準にできる
スキルを可視化できる
DX人材育成にスキルマップを活用することで、従業員一人ひとりが保有しているスキルやレベルを一目で把握できるのがメリットです。業務に必要なスキルを一覧化し、それぞれの習得状況を見える化することで、属人的になりがちなスキル管理を体系化できます。
また、誰がどのスキルを持っているのかが明確になることで、適材適所の人材配置が可能になるほか、組織全体のスキル傾向や課題も把握しやすくなります。
育成方針や研修計画を立てやすくなる
スキルマップの活用によって、組織としてどのスキルを重点的に育成すべきかが把握できるようになり、DX人材の育成方針や研修計画を立てやすくなるのもメリットです。
個々のスキルギャップを可視化することで、画一的な研修ではなく、レベルや役割に応じた最適な育成プランの設計が可能になります。また、部署やチームごとのスキル不足も把握できるため、研修の優先順位や実施時期の計画にも役立ちます。
評価・キャリアパスの基準にできる
スキルマップは、従業員のスキルを客観的に評価するための基準としても活用できます。どのスキルをどのレベルまで習得しているかが可視化されることで、能力に基づいた公正な評価が可能になり、評価の納得度も向上します。
また、どのスキルを身につければ次のステップに進めるのかが明確になるため、キャリアパスの設計に役立つのもメリットです。従業員自身が目指すべきスキルやキャリアの方向性を具体的にイメージできるようになることで、モチベーションの向上にもつながります。
DX人材スキルマップの作成に役立つ2つの指標

DX人材スキルマップを効果的に作成・運用するためには、どのようなスキルを基準にすべきかを決める指標が必要です。ここでは、スキルの棚卸しや評価に活用できる代表的な指標をご紹介します。
- DXリテラシー標準(DSS-L)
- DX推進スキル標準(DSS-P)
DXリテラシー標準(DSS-L)
「DXリテラシー標準(DSS-L)」は、経済産業省が策定し、IPA(情報処理推進機構)が実務面での整備・普及を担っている指標です。
すべてのビジネスパーソンが身につけるべきDXの基礎知識や姿勢を体系的に整理されており、非IT部門を含めた全社的なDX人材育成の出発点として活用できます。内容は「マインド・スタンス」「Why」「What」「How」の4つの観点で構成されており、実務に即したスキル可視化の基準として有用です。

2023年8月の改訂では、生成AIの登場がデジタル人材育成やスキルに与える影響についての項目が新たに追加されました(参考:経済産業省)。これにより、今後の社会やビジネスで求められるリテラシーに対する認識がよりアップデートされ、より実践的な指針として活用しやすくなっています。
スキルの土台づくりを重視する企業や、DXの初期フェーズにある組織にとっては、DSS-Lを活用することで人材育成の方向性が定まりやすくなります。
DX推進スキル標準(DSS-P)
「DX推進スキル標準(DSS-P)」は、経済産業省とIPAが策定した、DXを具体的に推進する人材の役割や必要スキルを体系化した指標です。
DSS-Lがすべてのビジネスパーソン向けのリテラシーを対象としているのに対し、DSS-Pは実際にDXを企画・推進・実装する人材を対象としており、より実務寄りで専門的な内容が特徴です。
対象人材は「ビジネスアーキテクト」「データサイエンティスト」「ソリューションアーキテクト」など6つのロールに分類され、それぞれに必要なスキルセットが明確化されています。

2024年7月の改訂では、生成AIなどの新技術に対する向き合い方やアクションの起こし方が新たに加わりました。特に、「活用する」「開発する・提供する」という2つの観点から、生成AIに関する具体的な行動指針が補記され、DX人材に求められるスキルの解像度がさらに高まっています。
スキルマップ作成時にDSS-Pを参照することで、役割ごとのスキル要件を体系的に定義できるため、より精度の高い人材育成や配置計画につなげることが可能です。
生成AI時代のスキルマップのトレンド

DX推進においてスキルマップの活用が重要であることはこれまで述べてきましたが、生成AIの急速な進化と普及により、必要とされるスキルの内容も大きく変化しつつあります。
これまでは「技術を使いこなす力」や「基礎的なデジタルリテラシー」が中心でしたが、今後はそれに加えて、より抽象度の高いレイヤーでの判断力や創造性、責任ある活用姿勢が重視されるようになります。
具体的には、次のようなスキルが必要です。
- AIを目的に応じて適切に活用する力
- AIに依存しすぎない判断力・批判的思考力
- 情報の真偽を見極めるリテラシー
- AIの活用に関する法令・倫理の理解
- AIを活用した業務改善・企画提案力
- AIと人の役割分担を考慮した業務設計スキル
- AIを活用した新たな価値創造・サービス設計力
- 社内でのAI活用を推進するリーダーシップ
今後のスキルマップ設計においては、技術的スキルだけでなく、「AIを使いこなすためのメタスキル」をどう評価し、育成していくかが重要なテーマとなります。生成AIを前提とした人材育成は、DXそのもののアップデートでもあり、スキルマップもその進化に即応していく必要があるのです。
DX人材スキルマップ導入時の3つの注意点

DX人材の育成を効率化・体系化する手段としてスキルマップは非常に有効ですが、導入や運用の過程で注意すべき点もいくつかあります。スキルマップが形だけの仕組みになってしまわないよう、あらかじめ押さえておくべきポイントを確認しておきましょう。
- 必要に応じて外部サービスも活用する
- 現場の声を反映しながら設計・運用する
- 定期的にアップデートし実際の育成施策と連動させる
①必要に応じて外部サービスも活用する
スキルマップの設計や運用には、専門的な知見やノウハウが求められることも多く、社内だけで完結させるのが難しいケースもあります。無理に進めてしまうと、現場が疲弊し、形だけの取り組みになってしまう恐れもあるため、必要に応じて外部の研修サービスや専門機関の支援を活用するのがおすすめです。
外部サービスを活用することで、第三者の視点による客観的な課題分析や、最新の業界トレンドを踏まえた実践的な研修設計が可能になります。また、自社に不足している専門スキルやノウハウを補完できるため、スキルマップの精度や人材育成の成果が大きく向上します。
「DX・AI人材育成研修サービス」では、短期集中型から中長期的な育成まで、企業それぞれの目的や人材レベルに応じた最適な研修プランを提案するサービスです。スキルマップの設計・活用と連動させることで、より実効性の高いDX人材育成を支援します。
スキルマップの運用に不安がある場合は、自社だけで完結させようとせず、このような外部の力を柔軟に取り入れる姿勢が重要です。
外部サービスとしてもおすすめの「DX・AI人材育成研修サービス」はこちら
②現場の声を反映しながら設計・運用する
スキルマップは、経営層や人事部門だけで作成・運用するのではなく、現場の実情や意見を反映させながら設計・改善していくことが重要です。
実際に業務を担う現場の社員こそが、必要なスキルや求められるレベル感を最もよく理解しているため、一方的なトップダウンでは実効性の低いマップになってしまう可能性があります。
初期段階から現場の関係者を巻き込み、フィードバックを得ながら設計することで、納得感と実用性の高いスキルマップに仕上げることが可能です。
③定期的にアップデートし実際の育成施策と連動させる
DX人材スキルマップは一度作成すれば終わりではなく、定期的な見直しと更新が欠かせません。テクノロジーやビジネス環境は常に変化しており、それに伴って求められるスキルも進化します。特に生成AIのような新技術が登場する現代では、スキル要件を柔軟に見直す体制が重要です。
また、スキルマップは人材育成施策と密接に連動させることで真価を発揮します。評価結果に基づいて個別の研修やOJTを計画し、育成状況をスキルマップ上でトラッキングすることで、継続的なスキル向上が実現しするのです。
スキルマップでDX時代の人材育成を成功させよう
DXの推進には、戦略的かつ継続的な人材育成が欠かせません。その中核を担うのがスキルマップです。
必要なスキルの可視化や育成方針の明確化、客観的な評価・配置に活用することで、個人と組織の成長を両立させることが可能になります。生成AIの台頭など、変化の激しい時代だからこそ、柔軟かつ実践的なスキル設計が求められます。
外部サービスの活用や現場との連携、定期的な見直しを通じて、スキルマップを“活きたツール”として育てていきましょう。