AutoCADを使用する際、図形のサイズ変更は重要な操作の一つです。図形のサイズを正確に調整することは、製図作業の精度やデザインの完成度に直結します。
しかし、初めてAutoCADを使用する人にとって、図形の尺度変更方法は少し戸惑うかもしれません。
そこで、本記事ではAutoCADにおける図形尺度変更の基本的な方法から実際にサイズを拡大・縮小する手順までを詳しく解説します。
正確な図形のサイズ変更をマスターすることで、AutoCADでの製図作業における効率性と正確性を向上させることができます。
AutoCADにおけるスケールの概念と重要性
AutoCADでは、図形のサイズを変更するためにスケールという概念が使用されます。
AutoCADのスケールとは、図形やオブジェクトのサイズを変更する機能です。
正確な寸法の表示やデザインの視覚的な確認、プロジェクトの一貫性の確保、印刷やプレゼンテーションの準備など、さまざまな重要な役割があります。
スケールを適切に設定することで、図面上での寸法や比率を現実世界に合わせて正確に表示することが可能です。
これにより、正確な寸法の確認や計測、デザインのバランス確認、プロジェクト全体の一貫性の確保、印刷物やプレゼンテーション資料の見栄えの向上など、効果的な製図作業が可能となります。
AutoCADの基本操作については以下の記事をご参照くださいませ。
AutoCADの尺度変更の方法
AutoCADには、図形の尺度変更を行うための基本コマンドがいくつかあります。
その中でも代表的なAutoCADの尺度変更コマンドを以下に紹介します。
尺度変更コマンド①Scale(SC)
図形の尺度変更を行う主要なコマンドです。基準点を指定し、拡大または縮小の倍率を設定して図形を選択します。
指定した倍率に基づいて、図形が拡大または縮小され尺度が変更されます。
AutoCAD初心者の方で尺度変更の動きが分からないという方は、こちらの動画で主要コマンドであるScaleを使った尺度変更を紹介しておりますので、まずは動きを確認してみてください。
尺度変更コマンド②Stretchコマンド
図形の「一部」を選択し、その部分を移動させることで尺度変更を実現します。
選択した部分をドラッグするか、移動先の位置を指定します。
移動した部分が元の形状に比べて伸び縮みすることになります。
円形や、ブロックでは全てが選択されるため、図形が移動するだけで利用できません。
AutoCADにおける図形の拡大手順
図形を拡大するためには、以下の手順に従います。
- Scale(SC)コマンドを、画面下部の入力部分に入力します。「SCALE」と入力してEnterを押しましょう。
- ”オブジェクトを選択”と表示されるため、拡大したいオブジェクトをクリックしてEnterを押します。
- 基準点を指定します。これは図形の中心や角など、変更の基準となる点です。
- 拡大倍率を設定します。例えば、2を入力すると2倍に拡大されます。
- 指定した倍率に基づいて、図形が拡大されます。
AutoCADにおける図形の縮小手順
図形を縮小するためには、以下の手順に従います。
- 拡大手順と同じように、Scale(SC)コマンドを実行します。具体的には、コマンド入力部分に「SCALE」と入力してEnterを押します。
- ”オブジェクトを選択”と表示されるため、拡大したいオブジェクトをクリックしてEnterを押します。
- 基準点を指定します。
- ここから拡大手順と少し変わります。縮小倍率を設定します。たとえば、0.5を入力すると半分のサイズに縮小されます。
- 指定した倍率に基づいて、図形が縮小されます。
- 図形が縮小されました。
AutoCADで図形の尺度変更をするポイントとヒント
図形の尺度変更はAutoCADにおいて重要な作業ですが、時には正確な調整が難しい場合もあります。
そこで、この章では図形尺度変更におけるポイントとヒントを紹介します。
図形のバックアップを作成する
図形の尺度変更は、元のサイズや比率を変える可能性があるため、AutoCADでは変更前には図形のバックアップを作成しておくことをおすすめします。
オブジェクトの選択方法
AutoCADでは尺度変更を行う際に正確な選択が必要です。
範囲選択やクロスウィンドウ選択など、適切なオブジェクト選択方法を使って図形を選択しましょう。
レイヤーの管理
AutoCADで作成した図形の尺度変更は、作業全体に影響を及ぼす可能性があるため、レイヤーの管理を適切に行うことが重要です。
変更したい図形が属するレイヤーを確認し、必要に応じてレイヤーの状態を調整してください。
グループ化やブロックの活用
AutoCADで複数の図形をまとめて尺度変更したい場合は、グループ化やブロック化を検討しましょう。
これにより、図形を一括で選択して尺度変更することができます。
寸法の再確認
図形を拡大・縮小し尺度変更する際は、寸法の再確認が重要です。
図面上の寸法や設計要件に従って、変更後の図形が要求に適合していることを確認しましょう。
AutoCADを使いこなすためには、基本的なコマンドとショートカットキーを知ることが非常に重要となります。以下の記事では、AutoCADの基本コマンドとショートカットキーについて紹介しておりますので是非参考にしてください。
AutoCADを使った高度な尺度変更のコツ
AutoCADには、より高度な尺度変更オプションが用意されています。以下にいくつかのオプションについて説明します。
全体を選択する方法は?
AutoCADで図形を拡大・縮小する際には、基準点として全体を選択することも可能です。
Scale(SC)コマンドを実行した後、基準点として「All」と入力することで、選択した図形全体が対象となります。
尺度変更を増やすには?
図形の尺度変更をさらに細かく調整する場合、Scale(SC)コマンドの倍率オプションを使用できます。
Scaleコマンドを実行した後、倍率を指定する代わりに、”S”キーを押して倍率オプションを有効化します。
その後、指定した倍率よりもさらに細かい倍率を入力することができます。
寸法をそのまま拡大するには?
図形の拡大・縮小を行う際、寸法をそのまま保ちたい場合があります。
Scale(SC)コマンドを実行した後、基準点の選択時に「Reference」または「R」を入力します。このオプションを選択することで、図形が拡大・縮小されても寸法は保持されます。
AutoCADで尺度変更ができない原因
図形の尺度変更がうまくできない場合、以下のような原因が考えられます。
原因①AutoCADで作成した図形がロックされている
図形が編集不可または読み取り専用に設定されている可能性があります。
図形のロックを解除するか、編集権限を確認してください。
以下の手順でAutoCADでロックを解除できます。
- 図形を選択します。
- 「ホーム」タブから「画層」パネルを選択。
- ロックを解除をクリックします。
- ロックが解除されます。
原因②AutoCADの図形がブロック化されている
ブロック化されたオブジェクトは、それを構成する個々の要素を編集することができません。
しかし、ブロック自体を編集することは可能です。
以下の手順でAutoCADでブロックを編集します。
- コマンドラインに “REFEDIT” と入力し、Enter キーを押します。
- ブロック編集を開始したいブロックを選択します。
- Enter キーを押すと、「参照編集」ダイアログボックスが開きます。ここでどこを編集するかを選択できます。
- 編集が終わったら、コマンドラインに “REFCLOSE” と入力し、Enter キーを押すと編集が終了します。
AutoCADブロック解除についてできない場合と注意点を以下の記事にて詳しく紹介しております。ご参照くださいませ。
原因③AutoCADで作成した図形のスケールが固定されている
図形のスケールが固定されており、変更が制限されている場合があります。
スケールの制約を確認し、必要に応じて変更してください。
オブジェクトのスケーリングを変更するには、「プロパティ」パネルからスケーリングを変更します。
- オブジェクトを選択します。
- 「オブジェクトプロパティ」パネルを開きます。
- ジオメトリに新しい値を入力します。
- 以上でスケーリングの変更が可能です。
AutoCADの尺度変更についてまとめ
図形の尺度変更は、AutoCADにおいて重要な操作です。
正確なスケールの設定や適切なコマンドの使用によって、図形を必要なサイズに拡大または縮小し尺度変更することができます。
ただし、注意が必要な点もありますので、データのバックアップの作成や図形のロック解除など、慎重な作業が必要です。
適切な手順とポイントを押さえて、効果的かつ正確な尺度変更を行いましょう。