DQNは、強化学習の代表的な手法の一つで、AIに報酬と罰則を与えることで学習させます。
AI開発において重要な技術ですが、AI初心者の方にとっては難しく感じるかもしれません。
そこで今回は、強化学習のDQNについてわかりやすく解説します。
強化学習DQNとは?
強化学習のDQNは、AIエージェントが経験に基づいて報酬を最大化していく学習手法です。
例えば、AIの迷路ゲームでは、ゴールに向かう際に、壁に当たった経験から次第に行動を改善していきます。家庭用掃除ロボットの場合、室内の家具や障害物を学習し、より効率的に部屋を掃除する方法を見つけ出します。
このように、過去の経験データからAIが未来の報酬を予測し、その予測に基づいて最適な行動を選んでいくことが強化学習のDQNなのです。
強化学習とは?
強化学習とは、AIの進化に欠かせないディープラーニング(深層学習)の一つです。
教師データ(正解データ)を与えず、AI自身が試行錯誤しながら環境から学習します。
報酬を得るための最適な行動を見つけ出すことが強化学習の目的です。
ディープラーニングには、強化学習のほかに教師あり学習、教師なし学習、マルチタスク学習などがあります。
教師あり学習
教師あり学習は、教師データを基に、AIが自分で考えて学習していく手法です。
AIは正答がわかるように指導され、その情報を活用して問題解決の方法を習得していきます。
道路標識や信号機、歩行者など、周囲の状況を認識し、適切な行動を決定する車の自動運転は、教師あり学習によるものです。
教師なし学習
教師なし学習は、教師データなしでAI自らが学習していく手法です。
教師なし学習は、正解が明確でない複雑な問題にも対応できます。
ユーザーの購買履歴から購入傾向や好みを分析するのは教師なし学習によるものです。
教師なし学習と強化学習はどちらも教師データがない学習方法です。
主な違いは以下のようになります。
マルチタスク学習
マルチタスク学習とは、AIに複数の異なるタスクを同時に学習させる手法です。
例えば、ロボットに画像認識と音声認識を同時に学習させることで、人の顔と名前を関連付けて認識できるようになります。
マルチタスク学習は、AI技術の能力性、および柔軟性向上に欠かせません。
以下の記事では、マルチタスク学習の仕組みや実装手順、実装例まで詳しく解説しています。
初心者向けの分かりやすい内容なので、あわせて読んで理解を深めましょう。
DQNとは?
DQNは、ディープラーニングを使って行動価値を学習する強化学習手法の一つです。
DQNでは、Q関数が高い(報酬期待値が大きい)行動を選びながら報酬を高めていきます。
従来のAIは、ゲームの状況と行動のパターンを一つひとつ覚えていく必要がありました。
しかしDQNでは、人間の脳のように画面を認識して状況を理解し、自ら最適な行動を考えます。
ちなみに、強化学習におけるDQNは、Deep Q-Networkの略称です。
ネットスラング「DQN」は同じ文字列ですが、全く関連性はありません。
強化学習のDQNの応用例
強化学習のDQNは、主にゲームプレイにおいて自ら戦術を習得・報酬を最大化しています。
しかし、近年ではゲーム以外の分野にも応用されはじめ、その可能性は広がり続けています。
以下の表では、DQNの応用分野と応用例をあげてみました。
応用分野 | 応用例 |
ゲーム | Atariゲームによるプレイヤーの学習など |
ロボット | ロボットの動作制御、行動決定など |
自動運転 | 自動運転車両の速度調整、経路決定など |
医療 | 画像診断による病変の検出、分類など |
金融 | 株価の予測、顧客の行動分析など |
製造 | 製造工程における異常検知など |
エネルギー | 需要を予測した電力供給システムなど |
強化学習のDQNのメリット
強化学習のDQNによるメリットは数多くあります。
ここでは、主なメリット3つについて解説します。
- 複雑な環境でも学習できる
- 幅広い課題に適用できる
- 人間の介入なしで学習できる
メリット①複雑な環境でも学習できる
強化学習におけるDQNは、複雑な環境でも効率的に学習できます。
従来は、環境と行動の関係性を直接モデル化しており、複雑な環境での学習は困難でした。
しかし、DQNは、経験リプレイと呼ばれる仕組みで過去の経験を蓄積し、ニューラルネットワークで学習することで、この問題を克服しています。
メリット②幅広い課題に適用できる
強化学習におけるDQNは、幅広い課題に適用できます。
例えば、ゲームAIをはじめ、自動運転、医療、金融などに活用できる汎用的手法です。
AIエージェントは環境から状況を理解し、ニューラルネットワークで最適な行動を模索します。過去の経験から学習できるため、実世界の広範な課題に対して柔軟に対応できるのです。
メリット③人間の介入なしで学習できる
強化学習におけるDQNは、人間の介入なしで学習できるAI技術です。
例えば、教師あり学習では、膨大なデータに正解ラベルを付与しなければいけません。
しかし、DQNは報酬という指標に基づいて学習していくため、データ収集およびアノテーション(ラベル付与)の手間を大幅に削減できます。
強化学習のDQNのデメリット
前項でみたように、強化学習のDQNには多くのメリットがありました。
しかし、一方でいくつかのデメリットも存在します。
- 学習に時間がかかる
- 局所解に陥りやすい
デメリット①学習に時間がかかる
強化学習のDQNの学習には、通常多くの時間がかかります。
試行錯誤を通じて経験を積み重ねるため、初期段階では無作為な行動が選択されやすいのです。
そのため、迅速に問題解決する場面では、学習時間がネックとなる可能性があります。
デメリット②局所解に陥りやすい
強化学習のDQNは、局所解に陥りやすいという課題があります。
報酬を最大化する学習中に、真の最適解を見逃し、局所解に留まるケースが多いのです。
エージェントにランダム性を持たせることで局所解は回避できます。
ランダムな行動を選択させるためには、「ε-greedy法」を用いると良いでしょう。
上記のように、強化学習のDQNにはメリット・デメリットが存在します。
これらを理解し、適切な実装を行うことで、幅広い問題に強化学習のDQNを応用できます。
強化学習のDQNによるPython実装方法
それでは最後に、強化学習のDQNをPythonで実装する手順をコードとともに解説します。
- ライブラリをプログラムに取り込む
- 強化学習の環境を定義する
- DQNのニューラルネットワークモデルを構築する
- Experience Replayを実装する
- 学習アルゴリズムを実装する
①ライブラリをプログラムに取り込む
最初に、必要なライブラリを自分のプログラムに取り込みます。
一般的に使われているライブラリは以下の通りです。
- NumPy(数値計算に特化したライブラリ)
- OpenAI Gym(強化学習の研究開発に特化したライブラリ)
- TensorFlow・PyTorch(機械学習やディープラーニングに特化したフレームワーク)
import numpy as np
import tensorflow as tf
import gym
②強化学習の環境を定義する
次は、強化学習の環境を定義しましょう。
以下では、OpenAI Gymの環境を使用しました。
env = gym.make(‘CartPole-v1’)
③DQNのニューラルネットワークモデルを構築する
そして、DQNのニューラルネットワークモデルを構築します。
ニューラルネットワークの構築において、最も基本的な構造である全結合層を用いましょう。
model = tf.keras.Sequential([
tf.keras.layers.Dense(24, activation=’relu’, input_shape=(env.observation_space.shape[0],)),
tf.keras.layers.Dense(24, activation=’relu’),
tf.keras.layers.Dense(env.action_space.n, activation=’linear’)
])
④Experience Replayを実装する
続いて、エージェントの過去の経験をランダムに呼び出し、再利用するためのExperience Replayを実装します。
from collections import deque
memory = deque(maxlen=2000)
⑤学習アルゴリズムを実装する
最後に、学習アルゴリズムを実装します。
ここには、エージェントが行動を選択し、環境と相互しながら過去の経験を活用し、ニュートラルネットワークを継続的に学習更新するプロセスが含まれます。
gamma = 0.95 # 割引率
epsilon = 1.0 # ε-greedy法の初期値
epsilon_min = 0.01 # ε-greedy法の最小値
epsilon_decay = 0.995 # εの減衰率
learning_rate = 0.001 # 学習率optimizer = tf.keras.optimizers.Adam(learning_rate)
def choose_action(state, epsilon):
if np.random.rand() <= epsilon:
return env.action_space.sample()
else:
return np.argmax(model.predict(state))for episode in range(EPISODES):
state = env.reset()
state = np.reshape(state, [1, env.observation_space.shape[0]])
total_reward = 0
while not done:
action = choose_action(state, epsilon)
next_state, reward, done, _ = env.step(action)
next_state = np.reshape(next_state, [1, env.observation_space.shape[0]])
memory.append((state, action, reward, next_state, done))
state = next_state
total_reward += rewardif len(memory) > batch_size:
minibatch = random.sample(memory, batch_size)
for state, action, reward, next_state, done in minibatch:
target = reward
if not done:
target = (reward + gamma * np.amax(model.predict(next_state)[0]))
target_f = model.predict(state)
target_f[0][action] = target
model.fit(state, target_f, epochs=1, verbose=0)if epsilon > epsilon_min:
epsilon *= epsilon_decay
上記の手順を組み合わせることで、基本的な強化学習のDQNの実装が完成します。
ただし、調整や改善が必要となる場合があるので、「本格的に実装したい」という場合はさらなる知識と技術が必要です。
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強化学習のDQNとは?まとめ
強化学習のDQNとは、AIエージェントが環境から状況を観察、行動を選択し、その結果得られる報酬を最大化するための学習手法です。強化学習のDQNはゲームAIをはじめ、広範な分野で活用されています。
強化学習のDQNはAIエンジニアにより生み出されました。
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