2025年の崖を越えた現在、企業に求められているのは「自社でDXを動かす力」です。しかしIPAの調査では、日本企業のDX内製化は諸外国より大きく遅れ、DX人材育成の課題が浮き彫りになっています。
本記事では、DX人材育成を4ステップでわかりやすく解説します。DX人材育成のポイント、進め方もお伝えするので、DX人材育成に課題を感じている企業の方は、ぜひご一読ください。
DX人材とは?
DX人材とは、ITやAIなどのデジタル技術を活用して自社のビジネスを変革する人材のことです。ツールの選定・導入だけでなく、DXの本質である「新たな価値創出」を実現するために、課題発見力や企画力、組織を動かす実行力も求められます。
日本におけるDX人材の現状

では、日本企業ではDXを担う人材がどれほど育っているのでしょうか。その手がかりとなるのが、自社でどこまでDXを主導できているかを示す「内製化率」です。この内製化率を見れば、DX人材が社内にどれだけいるかがわかります。
IPAの「DX動向2025」によると、以下のような結果が出ています。
| 区分 | 日本 | ドイツ | アメリカ |
| 内製化を進めている | 25.8% | 26.8% | 48.6% |
| 必要な部分は内製済み | 16.5% | 39.6% | 40.4% |
| パッケージ・SaaS利用で内製化せず | 23.8% | 23.0% | 8.2% |
| 外部開発を継続予定 | 27.4% | 10.4% | 2.8% |
| その他 | 6.6% | 0.3% | 0% |
このデータを見ると、日本は内製化の進みが遅いだけでなく、内製済みの割合の低さも顕著です。さらに外部開発への依存度が高く、DXを自走できる人材が不足している状況が多方面から浮かび上がっています。
参照:IPA「DX動向2025」本文
自社のレベルにあったDX人材育成支援を提供!
このように、日本ではDXを自走できる人材が不足しており、内製化も遅れています。「DX人材を効率的に育成したい」そんな企業様は、DX研修・人材育成サービスで自社のレベルにあったDX人材育成プランを提案してもらいましょう。無料相談は随時受け付けており、詳しい資料も無料でダウンロードできます。
「まずはDXについて知りたい」という方は、以下の記事をご参照ください。DXの定義やITとの違い、DX活用事例もお伝えしています。
DX人材を育成する3つのメリット

ここでは、DXを自走できる人材が不足している現状を踏まえ、DX人材を育成する3つのメリットを見ていきましょう。
- 外部依存から脱却できる
- DX推進に必要なスキルが明確になる
- 生成AI時代に対応できる人材を育成できる
①外部依存から脱却できる
DX人材を育成すると、これまで外部任せだった業務改善やシステム対応を、社内主導で進められるようになります。これにより、
- 小さな業務改善をその場で試せる
- トラブル時に社内で一次対応できる
- 現場の理解者による的確な判断ができる
- 外部サービスのコストを削減できる
といった状況が生まれます。意思決定のスピードが上がるのはもちろん、「自社にスキルが蓄積=資産」になる点もメリットといえるでしょう
②DX推進に必要なスキルが明確になる
DX推進といっても、「結局うちは何をすればいい?」と迷う企業は少なくありません。
これを解決すべく、経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」では、
- 全ビジネスパーソン向け:DXリテラシー標準
- DXに必要な5つの専門スキル:DX推進スキル標準
が示されています。DX人材を育成することで、これらの指標を自社に当てはめ、「誰に何を伸ばすべきか」を具体的に判断できるのは、DX人材育成に取り組むメリットの一つです。
③生成AI時代に対応できる人材を育成できる
生成AIの進化と共に必要なスキルも広がり、同時に「デジタルスキル標準」も毎年アップデートされています。令和6年7月の改訂では、共通スキルリストに次の項目が追加・見直しされました。
- 大規模言語モデル・画像/音声生成モデル
- プロンプト設計・コーディング支援・ファインチューニング
- 生成AIの活用・開発に関する技術スキル
DX人材を育成することで、こうした生成AIの急速な進化への対応力を社内に蓄えられます。
DX人材育成で押さえておきたい5つの「W」
DX人材を育成するメリットを理解したら、次に押さえておきたいのが「どう育成するか」です。ここでは、IPAがまとめたベストプラクティスをもとに、DX人材育成の設計に必要な5つの視点(5W)をお伝えします。
| 項目 | 視点 | 内容 |
| WHY | なぜ行うのか |
|
| WHO | 誰に対して |
|
| BY WHOM | 誰が担うのか |
|
| WHAT・WHEN | 何を・いつ学ぶか |
|
| WHERE・HOW | どこで・どうやって |
|
5つの「W」を押さえることで、DX人材を誰に・何のために・どう育成するかが明確になり、場当たり的ではない効果的なDX人材育成が実現します。
参照:IPA「デジタル人材育成モデル」
DX人材育成の4ステップ

DX人材の育成は、リーダーの意識改革から組織全体への拡散まで、段階を踏みながら育成を進めましょう。ここでは、IPAのデジタル人材育成モデルを参考にお伝えします。
| ステップ/項目 | 内容 |
| ①リーダーの火付け |
|
| ②推進者の確保 |
|
| ③コアメンバーの育成 |
|
| ④デジタル人材の拡大 |
|
DX人材育成の4ステップを進めることで、組織はDXを自走できる状態へと成長していきます。DXは一度きりの改革ではなく、続けて取り組むものです。人材を育成することは、DXに強い企業そのものを育成することにもつながります。
参照:IPA「デジタル人材育成モデル」
DX人材育成に必要なスキル一覧

IPAのDX推進スキル標準(DSS-P)では、DXを担う人材を5つの役割に分類し、それぞれに必要なスキルが定義されています。
| 人材類型 | 主な役割 | 必要なスキル |
| ビジネスアーキテクト | DX目的決定、関係者を調整/推進 | 構想/意思決定サポート、部門間調整 |
| デザイナー | 製品・サービスのUI/UXを設計 | 顧客視点の設計力、UXデザインスキル |
| ソフトウェアエンジニア | システムの設計・実装・運用 | システムアーキテクチャ設計、開発/運用 |
| データサイエンティスト | データで業務変革や新事業の実現 | データ収集/解析、AI活用、業務課題抽出 |
| サイバーセキュリティ | デジタル基盤のセキュリティ対策 | リスク分析、セキュリティ設計/運用 |
スキルを明確にすることで、資格取得やツール操作など、DX人材育成に向けた具体的な行動が取りやすくなり、形だけではない実践的なDX化につながります。
以下の記事でもDX推進人材について解説しています。DX人材育成5に必要な5つの人材類型も紹介しているので、業務内容を詳しく知りたい方はぜひご一読ください。
DX人材育成でよくある課題と対処法
続いて、DX人材育成でよくある課題と、その対処法について見ていきましょう。
- DXの目的が明確に定まっていない
- DX人材育成後に実務に活かせない
- DX人材の育成方法がわからない
DXの目的が明確に定まっていない
DX人材育成が失敗する理由は、DXの目的が曖昧なまま研修だけが先行してしまうためです。こうした場合「学んで終わり」になりがちなので、まずは自社内の真の課題を洗い出すことから始めましょう。具体的には、
- 時間やコストがかかりすぎる業務はどこか
- 属人化していて改善できていない作業は何か
- デジタルで置き換えられそうな業務はないか
といった点を押さえます。参加者のモチベーションを高め、DX人材育成の効果を最大化するためにも、目的意識を強く持って取り組むことが重要です。
DX人材育成後に実務に活かせない
座学中心の学習だけでは、身につけた知識が実務と結びつかず「学んだけれど使えない」状態になりがちです。こうした場合は、
- 業務データを使った簡易な分析演習
- 小規模な業務改善プロジェクトへの参加
など、学んだ内容をすぐに業務へ応用してみましょう。実際に手を動かすことで、理解が浅くなりがちなスキルも具体性を持って定着しやすくなります。
DX人材の育成方法がわからない
育成の方向性が決まっても、具体的な研修や学習内容の用意でつまずく企業は少なくありません。「とりあえず」という気持ちで選んでしまうと、やはり成果も見えにくくなります。こういった場合、
- 自社研修
- eラーニング
- オンラインセミナー
など複数の選択肢を比較してみましょう。迷ったときは、外部の専門サポートを受けて自社に最適なDX人材育成カリキュラムを策定してもらいましょう。
DX人材育成はプロのサポートで加速させよう!
DX人材育成には、目的設定・実務定着・研修設計といった課題があります。上記のように課題解決の対策方法はあるものの、実際には自社だけで解決するのは難しく、時間やコストがかかりすぎてしまうケースも少なくありません。
そんなときは、DX人材育成のプロのサポートを受けてみましょう。DX研修の導入企業数10,000社を超えたDX研修・人材育成サービスでは、
- DXレベルチェックによる現状把握
- 教育体制の構築支援
- 実践的なハンズオン研修
- 使える助成金の相談
までを一貫して提供しています。経験豊富なコンサルタントが丁寧にヒアリングしながら伴走し、導入後もしっかりサポートしてくれます。
DX人材育成の成功事例
次に、DX人材育成の成功事例を3例見てみましょう。
| 企業名 | 課題 | 解決後(成果) |
| 商船三井 | 情報共有の遅延・レガシーシステム | 1分データ収集で運航効率化 |
| Barings社 | 5社統合で業務・システムが分断 | 統合DXプロジェクトで基盤を統一 |
| ダイキン | ロールモデル不在・高度技術の学習機会 | AIベンチャー出向で実戦力向上 |
商船三井
商船三井は、海上と陸上の情報共有がメール主体であり、この際タイムラグが生じ、リアルタイムな運航判断ができない課題を抱えていました。また、50年来の独自システムがレガシー化し、海外拠点で使いにくいという課題も抱えていたのです。
この解決に向け、2022年に現業部門とIT子会社が一体となった「DX共創ユニット」を設立。現場と「共に創る」体制で内製化を加速させ、1分間隔でのデータ収集で、安全運航・運航効率化を実現しました。現在はアプリ開発によるヒューマンエラー削減にも取り組んでいます。
Barings社
5社が統合して誕生したイギリスのBarings社は、統合時組織ごとにシステムや業務プロセスがバラバラに稼働していました。この課題解決として、5社統合とDXを一体のプロジェクトを立ち上げ、自社最高のプロジェクトとして位置づけました。
統合5社のビジネスの基盤システムをすべて見直すこのDXの取り組みは、賛同者・支援者が殺到し、大手コンサルおよび、技術面では自社に最も適したニッチな企業を選定しています。
参照:DX白書2023
ダイキン
エアコンメーカーで有名なダイキンは、DICT(社内大学)でICT教育を受けた新人が、社内にロールモデルがいないため成長の方向性を描きにくいという課題を抱えていました。
そこで、DICT修了生をAIベンチャー(HACARUS)へ1年間出向させ、高度なAIプロジェクトに実戦参加しました。これにより、開発スピードが体感で4割向上し、課題解決のアプローチが明確になり、現在社内DXの中心人材として活躍しています。
参照:ダイキン工業株式会社
DX人材育成に伴い活用できる補助金一覧

DX人材育成に伴いデジタル化を進める企業は、ITツール導入・省力化投資・新事業開発などを支援する補助金が活用できます。ここでは、DXに関連する補助金をまとめました。
| 補助金名 | 対象となる取り組み | 補助額・補助率 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 中小企業のデジタル化 |
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| 中小企業省力化投資補助金 | 人手不足解消・省力化 (一般型、カタログ選択型) |
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| ものづくり補助金 | 生産性向上・新製品開発 |
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| 事業再構築補助金 | 新市場進出・業態転換 |
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補助金によっては公募期間が設定されているため、最新の募集情報を確認しながら活用してください。
参照:デジタル化・AI導入補助金2026、中小企業省力化投資補助金、ものづくり補助金公募要領概要版、必須申請要件 | 事業再構築補助金
DX人材育成についてまとめ
IPAが示すようにDX人材には幅広いスキルが求められ、企業が独力で育成するのは難易度が高いのが実情です。特に内製化を目指す場合は専門性が必要となるため、外部の専門家によるサポートを取り入れ、効率的かつ効果的にDX人材育成を進めましょう。