企業で社員研修やリスキリングに取り組みたいものの、「費用が高い」「成果が見えにくい」と感じていないでしょうか。人材開発支援助成金は、こうした悩みを解消するために国が用意した制度で、研修費用や研修中の賃金の一部が戻ります。
そこでこの記事では、人材開発支援助成金の全体像からコース別の違い、助成額の目安、申請で失敗しないポイントまでをわかりやすくまとめました。自社に最適な人材開発支援助成金のコースがあるかチェックしてみてください。
研修費と賃金が戻る「人材開発支援助成金」とは?

人材開発支援助成金とは、企業が従業員に「職務に関連する研修」を行ったとき、研修費用や研修期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。
日本では、人材不足や技術革新が進んでいるため、企業には継続的な人材育成が求められています。ですが、研修にはコストがかかり、特に中小企業では負担が重くなりがちです。そこで国(厚生労働省)は、「人への投資」を促進する目的で人材開発支援助成金をつくりました。
最大数千万円もの助成を受けられるケースもあるため、自社の育成方針と人材開発支援助成金のコースがマッチすれば、研修効果を高めながら負担を抑えられます。
人材開発支援助成金の基本ポイント
人材開発支援助成金は、すべての企業が自動的に使える制度ではなく、企業・従業員・研修内容の3点で条件を満たす必要があります。
以下より人材開発支援助成金が、「どんな企業・従業員が対象になるのか」「どんな訓練・研修が助成対象として認められるのか」を解説します。
対象となる企業・従業員
人材開発支援助成金の対象となるのは、雇用保険適用事業所で、雇用保険の被保険者である従業員を雇用している企業です。
| 人材開発支援助成金の関係項目 | 人材開発支援助成金の概要 |
|---|---|
| 対象企業 | 雇用保険適用事業所である 助成金の不正受給歴がない 計画どおりに研修を実施・管理できる体制がある |
| 対象となる従業員 | 雇用保険の被保険者である 役員のみ、雇用保険未加入者は対象外 ※一定条件を満たす契約社員・パートも含まれる |
一方で、「雇用を前提とした人材開発・育成」を支援する制度であるため、雇用関係が明確でないケースだと人材開発支援助成金の対象外になります。
加えて、人材開発支援助成金で個人・フリーランスは対象外です。対象外研修だけ受けさせて雇用しないのも人材開発支援助成金ではNGになるので注意してください。
対象となる訓練・研修の考え方
人材開発支援助成金の助成対象となるのは、職務に直接関係し、計画性・客観性がある訓練・研修です。以下に人材開発支援助成金の対象となる訓練や研修の例をまとめました。(人材開発支援助成金のコースによって異なります)
- IT・DX・AIスキル研修(プログラミング、データ活用など)
- 専門技術・資格取得に向けた研修
- 新規事業・職種転換に伴うリスキリング研修
- 外部研修機関によるOFF-JT
- 一定要件を満たすeラーニング
一方で、「内容が業務と無関係な研修」「出席管理・受講証明ができない研修」「訓練計画届に記載していない内容の研修」などはNGです。単なる社内勉強会や自己啓発では、人材開発支援助成金の助成を受けられない点に注意してください。
もし人材開発支援助成金向けのDX向けの研修をお探しなら、以下の記事がおすすめです。
人材開発支援助成金の主要4コースを比較
厚生労働省が提供している人材開発支援助成金は、大きく7つのコースに分かれます。
そのうち、企業全般で活用できる助成金の主要コースを4つに絞って解説します。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇付与コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
※人材開発支援助成金の「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」「障害者職業能力開発コース」は条件が狭まるため除外
人材育成支援コース
人材開発支援助成金の人材育成支援コースは、人材開発支援助成金の基本コースです。
正社員や有期契約労働者に対し、業務に直結する専門知識・技能を習得させる研修(OFF-JT・OJT)を行った場合、研修費用や研修時間中の賃金の一部が助成されます。
| 人材開発支援助成金のコース名 | 助成額(最大・目安) | 条件 |
|---|---|---|
| 人材育成訓練 | 経費助成:45%(中小)・30%(大手) 賃金助成:800円/時(中小)・400円/時(大手) |
10時間以上のOFF-JTを実施 |
| 認定実習併用職業訓練 | 経費助成:最大45%+加算 OJT実施助成:最大20万円/人 |
OJT+OFF-JTの組合せ/厚労大臣認定 |
| 有期実習型訓練 | 経費助成:最大75%+加算 OJT実施助成:最大10万円/人 |
有期契約労働者の正社員化が目的 |
教育訓練休暇付与コース
人材開発支援助成金の教育訓練休暇付与コースは、従業員が自発的に学ぶ時間を確保できる制度を企業が導入・運用した場合に支給される助成金です。
有給の教育訓練休暇や長期休暇、短時間勤務制度の整備を通じて、離職防止と中長期的な人材育成を後押しします。
| 人材開発支援助成金のコース名 | 助成額(最大・目安) | 条件 |
|---|---|---|
| 教育訓練休暇制度 | 30万円 (賃金要件等達成で36万円) |
3年間で5日以上取得可能な有給教育訓練休暇を新設・適用 |
| 長期教育訓練休暇制度 | 制度導入20万円+賃金助成 (最大1,600時間) |
30日以上の長期休暇制度を導入し実際に取得 |
| 教育訓練短時間勤務等制度 | 20万円 (加算あり) |
所定労働時間短縮・残業免除を30回以上可能な制度を導入 |
人への投資促進コース
人材開発支援助成金の人への投資促進コースは、DX・IT・成長分野への人材投資を強力に後押しする期間限定(令和4~8年度)の助成制度です。
定額制研修(サブスク)、高度デジタル人材育成、IT未経験者の実践訓練、自発的な学び支援などに対応しており、研修費・賃金・OJT費用まで幅広く助成されます。
| 人材開発支援助成金のコース名 | 助成額(最大・目安) | 条件 |
|---|---|---|
| 定額制訓練 | 経費60%(大企業45%) | サブスク型研修・eラーニング |
| 高度デジタル人材訓練 | 経費75%+賃金1,000円/時 | ITSSレベル3・4、大学院訓練 |
| 成長分野等人材訓練 | 国内150万円 海外500万円 |
DX・GXなど新規事業分野 |
| 情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 経費60%+賃金800円/時+OJT20万円 | IT未経験者の即戦力化 |
| 自発的職業能力開発訓練 | 経費45%(最大60万円) | 社員が自発的に受講した訓練 |
| 長期教育訓練休暇等制度 | 制度導入20万円+賃金助成 | 30日以上の休暇・短時間勤務 |
事業展開等リスキリング支援コース
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げやDX・GX推進に伴い必要となる専門スキルの習得を支援する助成制度です。
AI・IoT・データ活用などの実務訓練を対象に、研修費の最大75%と賃金助成を受け取ることができ、事業成長と人材育成を同時に進めたい企業に適しています。
| 人材開発支援助成金のコース名 | 助成額(最大・目安) | 条件 |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 経費助成:最大75%(中小)・60%(大企業) 賃金助成:1,000円/時(中小)・500円/時(大企業) ※1事業所あたり年1億円上限 |
・新規事業・DX・GX等に伴うOFF-JT(10時間以上) ・事業展開等実施計画の提出必須 ・eラーニング・定額制は経費助成のみ |
企業向けの人材開発支援助成金コースの選び方

人材開発支援助成金は、研修内容そのものよりも「企業がどんな人材課題を解決したいか」によって選ぶべきコースが変わります。前述した主要4コースについて、目的別に人材開発支援助成金のコースを整理すると次のとおりです。
| 人材開発支援助成金のコース名 | 人材開発支援助成金が向いている企業 |
|---|---|
| 人材育成支援コース(基本コース) | 初めて助成金を使う企業 幅広い研修を行いたい企業 |
| 教育訓練休暇付与コース | 人材定着・離職防止を重視する企業 |
| 人への投資促進コース | DX・IT人材を早急に育成したい企業 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業・DX・GXを進めたい企業 |
多くの企業では、「まずは人材育成支援コース」から始め、DXや新規事業の段階で、人材開発支援助成金の他コースを組み合わせていくのがおすすめです。
失敗しない人材開発支援助成金の申請方法

人材開発支援助成金を受けるためには、「事前申請・証拠管理・期限厳守」のルールを守ることが欠かせません。不支給のリスクを避ける参考として、申請手順を紹介します。
訓練実施計画届(1か月前まで)
人材開発支援助成金の申請で特に重要なのが、訓練開始前の計画届提出です。
次の情報を記載した「職業訓練実施計画届」を、原則として訓練開始日の1か月前までに管轄労働局へ提出します。
- 訓練内容
- 時間数
- 対象者
- 講師
- 費用
なお、事業展開等リスキリング支援コースなどでは、追加で「事業展開等実施計画」の提出も必要です。計画段階で人材開発支援助成金に対する研修目的と事業内容の整合性を明確にしておきましょう。
(参考:厚生労働省「人材開発支援助成金の申請書類一覧」)
研修実施・出席管理
人材開発支援助成金の計画が受理されたら、届出内容どおりに研修を実施します。
この際に重要なのが、出席管理と証拠書類を正しく整理することです。
出勤簿・タイムカード・受講記録・カリキュラム・講師資料などを保管し、研修が人材開発支援助成金の助成条件にマッチしていることを説明できる状態にしておきます。
実施内容や時間が計画とズレると人材開発支援助成金の不支給になるため、変更が生じた場合は必ず事前にセミナー主催者や労働局へ相談しましょう。
支給申請(訓練終了後2か月以内)
人材開発支援助成金の対象研修を終了したら、終了日の翌日から2か月以内に支給申請を行います。支給申請書に加え、次のような書類の添付が必要です。
- 賃金助成計算書
- OFF-JT実施状況報告書
- 賃金台帳
- 振込証明
- 出勤簿
特に「研修費を全額支払っていること」「賃金を通常どおり支払っていること」が確認できないと人材開発支援助成金が不支給になります。期限超過は原則不可ですので、研修終了前から人材開発支援助成金の申請準備を進めておきましょう。
よくある失敗・不支給になるケースと対策

人材開発支援助成金は「条件を満たしているつもり」でも、不支給になるケースが少なくありません。
その多くの原因は、制度の理解不足ではなく申請設計と運用のズレが関係しています。
次のように研修前後の手続きや記録管理が甘いと、人材開発支援助成金の助成対象外と判断されやすくなります。
- 訓練実施計画届を訓練開始後に提出した
- 実施した研修内容・時間が計画届と一致しない
- 出勤簿・受講記録など証拠書類が不足する
- OFF-JT要件を満たさない社内研修だった
- 申請期限(訓練終了後2か月以内)を過ぎた
- eラーニングで賃金助成まで申請した
人材開発支援助成金のミスを防止する対策として、研修前に「助成金前提の研修設計」を行い、計画提出・証拠管理・期限管理を社内ルール化すると安心です。少しでも不安がある場合は、人材開発支援助成金を申請する前に労働局や専門家へ相談しましょう。
人材開発支援助成金に対応したおすすめ研修・講座
人材開発支援助成金を利用して、社内人材のスキルアップを目指したい方も多いでしょう。
制度を活用し、人材開発支援助成金を受けられる講座をまとめました。
実践的に学べる生成AIセミナー

DX推進や業務効率化を本格的に進めたい企業は、「生成AIセミナー」がおすすめです。
特に近年では、ChatGPTやGemini、Copilotなどを用いて、業務効率化を図る企業も増えてきています。

対して当講座では、生成AIツールの実践活用から、プロンプト設計、API連携による自社専用生成AIの構築までを体系的に学べます。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース等)を活用すれば、研修費用や研修時間中の賃金の一部が助成対象となり、コストを抑えたDX人材育成が可能です。
| セミナー名 | 生成AIセミナー |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 27,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・eラーニング |
また、生成AIのほかの講習もチェックしてみたい方は、以下の記事がおすすめです。
実践的に学べるMOS対策短期集中講座

Excel・Wordの基礎力を短期間で底上げしたい企業は、「MOS対策短期集中講座」がおすすめです。Microsoftソフトは多くの企業が活用しており、以下のように関数を組んでデータを整理するケースも少なくありません。そのため、MOSの試験を必須にしている企業もいるはずです。

これに対し当講座では、MOS試験対策と実務に直結する操作スキルを同時に習得でき、社員研修としても導入できます。
人材開発支援助成金を活用すれば、研修費用や研修時間中の賃金の一部が助成対象となり、コストを抑えた人材育成が可能です。
| セミナー名 | MOS対策講座 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 16,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京)・ライブウェビナー・eラーニング |
人材開発支援助成金についてよくある質問
人材開発支援助成金について、よくある質問をFAQ形式で回答します。
人材開発支援助成金についてまとめ
人材開発支援助成金を活用すれば、研修費用や研修中の賃金の一部が助成されるため、教育コストを抑えながら人材の底上げや専門化を進められます。
特に、コスト面で高いハードルを抱えやすい中小企業の場合、制度を活用することで、DX・新規事業・業務効率化に直結する研修を実質半額以下にできるケースもあります。
ただし、手続きミスによる不支給リスクも少なくないため、人材開発支援助成金の制度を正しく理解し、自社の目的に合ったコースを選ぶことが重要です。