自動運転やAI、5Gなどの最先端分野の開発・検証で活用されているMATLAB(マトラボ)。
しかし、MATLABという名前を聞いたことはあっても、「結局どんなツール?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、MATLABの基本情報、できること、メリット・デメリット、無料で使えるMATLAB Onlineまで、初心者向けに分かりやすく解説します。
MATLABとは?
MATLAB(マトラボ)とは、数値計算・データ解析のための統合開発環境です。アメリカのMathWorks(マスワークス)社が開発したソフトウェアであり、そこで使われるプログラミング言語(MATLAB言語)に対しても使われます。
Pythonとの違い
MATLABは「プログラミング言語」としても使用されるため、プログラミング言語を代表する「Python」と比較されることが多いです。以下では、MATLABとPythonの違いをわかりやすく一覧表にまとめました。
| 項目 | MATLAB | Python |
| 分類 | プラットフォーム/言語 | プログラミング言語 |
| 主な分野 | 数値解析、シミュレーション、制御システム | Web開発、データサイエンス、業務自動化 |
| 特性 | 数値計算・行列演算に特化 | 汎用性が高い |
| 料金体系 | 有償(ライセンス購入が必要) | 無料(オープンソース) |
| 開発環境 | 統合環境(専用GUI、ツールボックス有) | ユーザー構築型(自分でインストール) |
MATLABは、言語と開発環境がひとつにまとまっているため、研究に集中しやすいように作られています。これに対してPythonは、多彩な場面で使える汎用的な言語です。
そのため、Pythonで作ったものをMATLABのテスト環境に取り込み、仕上げや検証に活用することもできます。つまり、この2つは「お互いの強みを補い合う」という関係性にあるのです。
MATLABの価格
MATLABの料金形態は、「MATLAB本体」を購入し、必要な機能をオプション製品として追加購入するシステムです。以下では、個人、および法人・学生向けの価格をまとめました(1ドル145円で計算)。
個人向け
| カテゴリ | 製品名 | 価格(ドル) | 価格(日本円) |
| MATLAB本体 | MATLAB | 105ドル | 15,225円 |
| AI・機械学習 | Deep Learning Toolbox | 29ドル | 4,205円 |
| 数学・最適化 | Optimization Toolbox | 29ドル | 4,205円 |
| 並列計算 | Parallel Computing Toolbox | 29ドル | 4,205円 |
なお、MATLABのオプションは、全種類29ドル(4,205円)で提供しています。
商用(企業)・学生向け
| 製品名 | 価格(ドル) | 価格(日本円) | 対象ユーザー |
| Standard | ー | 135,000円/年 | 商業組織(企業など) |
| Startups | ー | 545,000円/年 | スタートアップ企業 |
| Academic | ー | 38,750円/年 | 教育・学術分野 |
| Student | 69ドル | 10,005円 | 学生 |
上記のように、学生以外のプランは年単位のサブスク形式で提供されています。
参照:MATLAB Home、Pricing and Licensing
MATLABは無料評価版がある
MATLABの料金体系は有償ですが、30日間の無料評価版が提供されています。この無料評価版を使うと、以下のことが可能です。
- MATLAB、Simulink、80以上のオプションを使える
- オンラインアクセスは無制限で提供される
- デスクトップにダウンロード・インストールして利用できる
この無料評価版は、MATLABの公式サイトにアクセスし、トップページの「無料評価版を試す」をクリックすれば利用できます。
MATLAB連携の土台・Pythonを効率的に学ぼう!
PythonとMATLABの相互作用を実現するためには、まず連携の出発点であるPythonの基礎知識が必要です。
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MATLABは何ができる?

ところで、MATLABは実際のところ何ができる技術なのでしょうか。ここでは、MATLABでできることを具体的な活用事例から見ていきましょう。
①自動運転システムの設計とテスト
MATLABは、自動運転のシステムの設計とテストで活用されています。具体的には、
- カメラやセンサーから得た情報を処理
- 「次にどう動くべきか」を判断
- 様々な状況(急な割り込みなど)に対応
といった仕組みです。これにより、開発の時間とコストを大幅に削減し、加えて「いきなり開発した車で試す」というリスクもなくなります。
②ディープラーニングによるAI開発
MATLABは、AIの根幹技術・ディープラーニング(深層学習)でも活用されています。これは、
- コンピューターが膨大なデータを学習
- データからパターン、特徴を発見
- その結果から回答を提示
のような手順で自律的に学習する技術です。MATLABでは、監視カメラの映像から人の動きを認識し、「歩きスマホをしている人」を自動で見つけ出すシステムなどが開発されています。
③コンピュータービジョンによる画像・映像の理解
MATLABは、コンピュータービジョン(画像を理解させる技術)でも活用されています。これは、コンピューターに人間の「目」の役割を持たせる技術で、例えば、
- 工場で流れてくる製品の不良品を検出
- 医療画像から特定の病変を発見
のように、画像・映像への理解が必要な技術に用いられています。主に、「人間では見逃してしまうような小さな違いを、正確かつ高速に判別したい」というシーンで使われます。
④5G通信の波形作成・送受信機の性能テスト
MATLABは、5Gのような高速通信技術の開発でも使われている技術です。具体的には、実物のアンテナや基地局を作る前に、MATLAB上で「もしこう設計したらどう動くか?」を再現するシーンで活用されています。例えば、
- 5Gで使う電波の波形を設計
- 送信側・受信側でどれだけ正しくデータが届くかテスト
といったことを、コンピューター上で確認できます。これにより、通信技術の開発を効率化し、失敗した際のリスクも下げられます。
MATLABを導入するメリット・デメリット

続いて、MATLABを導入する前に知っておきたい、メリットとデメリットを解説します。
MATLABを導入するメリット
まずは、MATLABの導入による主なメリットを4つ解説します。
計算処理が速い
MATLABは演算が高速であるため、大きなデータや複雑な計算も短時間で実行できます。さらに、公式で提供している「パフォーマンス向上の手法」を活用すれば、計算スピードをさらに高めることも可能です。
開発コストを削減できる
MATLABはコードを短く書けるため、C言語やPythonと比べて記述量が少なく済む場面があります。コードが簡潔になる分、デバッグ(プログラムの誤りを発見・修正)にかかる労力も減り、開発全体の時間やコストを抑えやすくなります。
グラフ作成機能が豊富にある
MATLABは2D・3Dグラフを簡単に作成でき、複数のグラフを重ねたり、一部だけを拡大したりといった操作もスムーズです。Excelよりもデータの可視化機能が充実している点も特長です。
追加オプションで機能を拡張できる
MATLABは分野別のツールボックスを追加することで、音声解析や信号処理などの専門的な処理も実行できます。例えば、信号処理システムの設計やシミュレーションによる検証ができるなど、必要な分野に応じて機能を増やすことが可能です。
MATLABを導入するデメリット
MATLABの導入には、いくつか注意しておきたい点もあります。
有償である
MATLABは、本体のみで約15,225円かかります。ここに、約4,205円で必要な機能(オプション)を追加していくというシステムです。無料のPythonと比較すると、有償であるMATLABのデメリットが際立ちます。
複雑な並列計算が苦手
MATLABは基本的な計算処理は得意ですが、多数の処理を同時に進めるような複雑な並列計算は不得意です。Parallel Computing Toolboxなどのオプションを使用すれば並列計算も可能になりますが、追加の学習やコストがかかります。
オプションの使いこなしが難しい
MATLABのツールボックスは便利な一方で、それぞれに学習が必要です。MATLABだけでは高度な機能をそのまま利用できないというのは、初心者の場合、特に大きなデメリットでしょう。
MATLAB Onlineとは

MATLAB Onlineは、MATLABの機能をクラウド上で利用できるサービスです。パソコンへソフトをインストールする必要はなく、Webブラウザーだけで簡単に使えます。
MATLAB Onlineは、以下のような作業に対応しています。
- ファイルとプロジェクトの連携
- Arduinoなどのハードウェアに接続
- AWSクラスターへ処理を拡張
- Simulinkや主要アドオンの利用
- クラウドストレージと連携したチーム作業
MATLAB Onlineは、クラウドの特性を活かした柔軟性が魅力で、「作業を中断せずに続けたい」という方に最適なシステムです。
MATLAB Onlineは無料で使える?
MATLAB Onlineには、無料で利用できる「basic」と有料版の2種類があります。詳しい内容を以下の表で見てみましょう。
| 項目 | MATLAB Online(basic) | MATLAB Online |
| 料金 | 無料 | 有料(ライセンスに応じる) |
| バージョン | オンラインのみ | オンラインおよびデスクトップ |
| 利用可能製品 | 10製品 | ライセンスに応じる |
| 利用可能時間/月 | 20時間 | 制限なし |
| ストレージ容量 | 5GB | 20GB |
| 連続計算時間 | 15分 | 90分 |
| アイドルタイムアウト | 15分 | 60分 |
このように、無料版で使える内容には上限はありますが、学習や軽作業には十分な範囲です。
MATLAB Onlineの使い方
このMATLAB Onlineは、「MATLAB Online」にアクセスし、「MATLAB Online」をクリックすれば利用できます。この際、まずはサインインするために、MATLABのアカウントを作成しておきましょう。
MATLABの有料ライセンスをインストールする方法

続いて、MATLABの有料ライセンスをインストールする方法をお伝えします。この際、
- MathWorksアカウントでサインイン
- 「MATLABのダウンロードとインストール」にアクセス
- お使いのパソコンに合ったインストーラーをダウンロード
という流れで進めます。以下の解説に入る前に、②の「MATLABのダウンロードとインストール」にアクセスまで進めておきましょう。
では、WindowsとmacOSのインストール手順をご紹介します。
Windowsの場合
まずは、Windowsのインストール方法をお伝えしましょう。
- MathWorksダウンロードから「MATLABリリース」を選択
- インストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたインストーラーをダブルクリック
- 画面の指示にあわせインストールを完了
なお、既定のインストールフォルダーは「C:\Program Files\MATLAB\R20XXy」です。
macOSの場合
続いて、macOSのインストール方法を見ていきます。なお、Apple Silicon搭載のMacでは、別途Javaランタイムが必要です。
- MathWorksダウンロードから「MATLABリリース」を選ぶ
- インストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたDMGファイルを解凍
- ダブルクリックしてインストーラーをマウント
- インストーラーをダブルクリック
- 画面の指示に従ってインストールを完了
なお、既定のインストールフォルダーは、「/Applications/MATLAB_R20XXy.app」です。
MATLABの構文
MATLABをはじめとするプログラミングでは、データ処理やシミュレーションのように、同じ操作を何度も繰り返す場面がよくあります。そこで便利なのが「for文」です。
ここでは、MATLABの基本構文として、この「for文」の動き方をわかりやすく紹介します。
「for文」の仕組み
「for文」では、
- どこから始めるか(開始値)
- いくつずつ増やすか(刻み幅)
- どこまで繰り返すか(終了値)
の3つを指定します。指定した範囲に合わせて「カウンター」が1回ずつ動き、処理が繰り返されます。
| 項目 | 主な内容 |
| 構文 | for c = 開始値:刻み幅 : 終了 |
| c | ループカウンター。繰り返すごとに値が変わる |
| 刻み幅 | 1ずつ増える場合は省略できる(1:5など) |
「for文」の基本の書き方
for文は、「for」と「end」で処理を挟み込む形で記述します。基本的な書き方は次の通りです。
Matlab
for c = 1:1:5
disp(c)
end
上記は、「c」が「1→2→3→4→5」と変わりながら処理を5回繰り返す例です。「disp(c)」は、値を表示すると同時に自動で改行するため、結果は
1
2
3
4
5
のように縦に並んで表示されます。
刻み幅を省略した書き方
for文では、刻み幅が1の場合は省略できるため、先ほどのコードは以下のように書くことができます。
Matlab
for c = 1:5
disp(c)end
このように、「開始」と「終了」だけ書けば、コードがよりシンプルになります。
Pythonの「for文」との違い
MATLABとPythonの「for文」は、どちらも繰り返し処理に使いますが用途が少し違います。
- MATLABの「for文」は数字を順番に数える
- Pythonの「for文」はリストや文字列などのデータの中身を順番に取り出す
例えば、MATLABでは
for c = 1:5
と書くと、「1~5」をそのまま順番に数えて処理します。
一方、Pythonで
for item in [1, 3, 5]
と書いた場合、リストの中に入っている「1、3、5」を順に取り出して処理します。
このように、MATLABは「数字を数える」、Pythonは「データを取り出す」という用途で「for文」を使っているのです。
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Pythonの「for文」をはじめとした汎用的なデータ処理能力は、MATLABとの相互連携を実現する基礎的なスキルです。Python基礎セミナー講習はPythonの基礎文法、データスクレイピングや画像処理の実装など幅広く学べます。
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MATLABについてまとめ
MATLABは数値計算を得意とするソフトで、その名前はそのままプログラミング言語としても使われています。基本的には有償ですが、無料で使える「MATLAB Online」や無料評価版(30日)もあります。
それぞれ、無料で試せる範囲は限られているものの、本格的なソフトを使ってシミュレーションを体験したい方にはおすすめのサービスです。