エンターテイメントやビジネスの場で活用が広がっているメタバースですが、ゲームエンジンのUnityを使えば個人でも構築が可能です。
本記事では、Unityでメタバースを構築する方法について解説します。また、Unityを使ったメタバース開発の事例も紹介しているので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
メタバースとは

メタバースとは、インターネット上に構築された3Dの仮想空間のことを指します。現実世界を模した街や施設などが再現されており、利用者は自分の分身となるアバターを操作して自由に移動できます。
空間内では、テキストチャットや音声通話を通じて、世界中のユーザーとリアルタイムでの交流が可能です。
メタバースとVR・ARの違いは?
メタバースとVR・ARは混同されやすい技術ですが、以下のような違いがあります。
| 比較項目 | メタバース | VR | AR |
| 定義 | 仮想空間そのもの | 仮想空間を体験する手段や技術 | 現実世界を仮想的に拡張する技術 |
| 体験人数 | 複数人が同時に参加 | 基本的に一人で体験 | 基本は一人だが複数人でも利用可能 |
| 環境 | 街や施設全体を仮想空間として再現 | 特定のエリアやオブジェクトを再現することが多い | 現実の環境に仮想の情報を追加 |
メタバースはVRやARの技術を活用しつつ、より広範な運用を前提としている点が特徴です。
Unityがメタバースの構築に向いている理由
Unityがメタバースの構築に向いているとされるのには、以下のような理由があります。
- 初心者でも扱いやすい
- さまざまなSDKが提供されている
- アセットが充実している
- マルチプラットフォーム対応している
- 開発における情報が多い
これらの理由についてみていきましょう。
①初心者でも扱いやすい
Unityは高度なプログラミング知識がなくても始められるゲームエンジンです。直感的に操作できるエディターが備わっており、ドラッグ&ドロップ操作でオブジェクト配置や設定が可能です。
そのため、専門知識がない初心者でも簡単にメタバース空間の制作をスタートできます。
②さまざまなSDKが提供されている
SDKとは、開発に必要なツールやAPI、ドキュメントなどがセットになったパッケージのことです。多くのメタバースプラットフォームがUnity向けのSDKを公開しています。
メタバース開発では、専用ソフトを利用する方法と、UnityのSDKを活用する方法の2つが一般的です。SDKを活用する場合、一度Unityの操作スキルを身につければ、ほかのメタバースの開発にも応用できるため、その汎用性は大きな魅力といえるでしょう。
③アセットが充実している
Unityのアセットストアには、3Dモデル、テクスチャ、アニメーションなど、多彩な素材が揃っています。無料で使用できるものも多く、コストをかけずにクオリティの高いメタバース開発ができるのが魅力です。
一から素材を制作する手間を省けることにより、初心者でもVRの環境開発に集中して取り組めるようになります。
④マルチプラットフォーム対応している
UnityはWindowsやmacOSだけでなく、iOS、Android、さらにはゲーム機など幅広いプラットフォームに対応しています。
これにより、一度作成したプロジェクトを、複数のデバイスでもほぼ同じ仕様で利用できるます。また、各プラットフォームごとに大幅な修正を加える必要がないため、開発工数を削減でき、効率的に展開することが可能です。
⑤開発における情報が多い
Unityは世界中で利用されているため、解説記事やチュートリアル動画、書籍が豊富に存在します。さらに、活発なユーザーコミュニティもあり、疑問点があれば質問して解決しやすい環境が整っています。
これにより、学習や開発のハードルを大きく下げられます。
また、Unityの使い方をプロから学びたい方は、Unity基礎セミナーがおすすめです。実際にゲーム制作を行いながらUnityの基本操作を学べるので、初心者でも実践的なスキルが身につくでしょう。詳細は以下のリンクから確認してみてください。
Unityを使ったメタバース開発の事例
以下のコンテンツはUnityを使ったメタバース開発によって作られました。
- VRChat
- Cluster
- Spatial
これらのUnityを使ったメタバース開発の事例について見ていきましょう。
①VRChat

引用:VRchat
VRChatは、アバターを通じて世界中のユーザーと会話やゲームを楽しめるソーシャルVRアプリです。ユーザーは自分で作成したワールドや、誰かが作成したワールドを自由に探検できます。
さらに、自分の動きをワールド内に反映させることで、その場にいるかのような高い没入感を味わえます。
②Cluster

引用:Cluster
Cluster(クラスター)は、国産のメタバースプラットフォームです。ユーザーはボイスチャットやテキストメッセージ機能を使って、リアルタイムに交流できます。
また、渋谷の街並みを再現した「バーチャル渋谷」など、大規模イベントもClusterで開催されています。
③Spatial

引用:Spatial
Spatial(スパーシャル)は、ビジネス利用に特化したブラウザ型のメタバースプラットフォームです。仮想オフィス機能が充実しており、ビデオ通話やテキストチャット、デジタルホワイトボードなどを活用して、遠く離れた人とも交流ができます。
また、自作ワールドの作成にも対応しており、ミーティングやセミナーなどを独自の空間で開催することが可能です。
UnityとClusterを使ったメタバース空間の構築方法
続いては、UnityとClusterを使って、実際にメタバース空間を構築する方法について紹介します。
- Clusterのテンプレートフォルダをダウンロードする
- ワールドを作成する
- ワールドを公開する
これらのUnityとClusterを使ったメタバース空間の構築手順について見ていきましょう。
①Clusterのテンプレートフォルダをダウンロードする
まず、Cluster公式サイトからメタバース構築用のテンプレートフォルダをダウンロードします。このテンプレートフォルダにはClusterでワールドを作成するために必要な機能が含まれているため、ゼロから環境を整える手間を省けます。
ダウンロードしたテンプレートフォルダは、Unity Hubのプロジェクトメニューにある「追加」から開きましょう。

なお、このとき使用するUnityのバージョンは必ず「Unity 2021.3.4f1」にしておく必要があります。
また、Unityのインストールがまだ済んでいない方は、以下の記事を参考にしてください。Unityのインストール方法からプロジェクトの作成方法までわかりやすく解説しています。
②ワールドを作成する
Clusterのテンプレートファイルを開いたら、まずはワールドの作成から行います。最初にGame Objectメニューの「3D Object」から「Plan」で床を作成し、プレイヤーが立つための地面を用意します。
次に、Game Objectメニューの「Create Empty」で空オブジェクトを追加してください。続いて、「Inspector」の「Add Component」から「Spawn Point」を追加することでプレイヤーの初期位置を設定します。

さらに同じ手順で別の空オブジェクトを作り、「Inspector」から「Add Component」の「Despawn Height」でリスポーン処理を設定します。

このとき、スポーン時に判定が当たらないように、オブジェクトは床よりも下に配置しましょう。
最後に、エラーの原因となる「Main Camera」を選択してDeleteキーで削除しましょう。
③ワールドを公開する
ワールドをClusterにアップロードするための設定を行います。このとき、Clusterの登録が済んでいない方は、あらかじめアカウントを作成しておいてください。
GoogleアカウントやApple IDから無料で登録できます。
Clusterの登録ができたら、UnityのClusterメニューにある「ワールドアップロード」から「Webでトークンを発行」を選択しましょう。

すると、ブラウザでClusterの公式サイトが開くので、「トークン作成」をクリックしてアクセストークンを取得します。

Unityに戻り、「アクセストークンを貼り付けてください」の項目に先ほど取得したトークンを貼り付けてください。
貼り付けたらワールドの編集画面になるので、画像やワールド名を設定して「”新規ワールド”としてアップロードする」をクリックします。

処理が走り、ワールドが作成されたら、「ワールドに入る」から作成したワールドに入室できるようになります。
UnityとUnreal Engineとの違いは?
UnityとUnreal Engineは、どちらもメタバースの構築に使われる代表的なゲームエンジンです。
Unreal EngineはUnityと比較してグラフィック性能が高いため、より繊細なバーチャル空間を構築したい場合におすすめです。
一方で、Unity開発に使われるC#とUnreal Engineで使われるC++では、C#の方が学習コストは高くありません。
そのため、どのようなメタバースを構築したいのかや、どの程度の規模感にしたいかなどによって、最適なソフトを選ぶことが大切です。
Unityの学習方法
Unityを学習するなら、以下のような方法があります。
- 公式チュートリアルを利用する
- 本で学習する
- コミュニティを利用する
- 講座を受講すること
これらのUnityの学習方法について見ていきましょう。
①公式チュートリアルを利用する
Unityは、公式が使い方を解説したチュートリアルを無料で提供しています。初心者にとって簡単すぎず、難しすぎないチュートリアルが揃っているため、最初の学習として最適です。
また、実際に手を動かしながら学べるので、インプットとアウトプットを同時に行えるのも魅力です。Unityを使ったゲーム作りを体験してみたい方は、まず公式のチュートリアルから始めてみましょう。
②本で学習する
本は、基礎を学びたい初心者におすすめの学習方法です。Unityの仕組みやC#の基礎、簡単なゲーム制作の方法まで一通りカバーした入門書が多く販売されています。
さらに、書籍なら手元に残る資料として繰り返し見直せるのもメリットです。
また、Unityが学べる本にはどのようなものがあるのかについては、以下の記事を参考にしてください。難易度別に分けておすすめの本を厳選して紹介しています。
③コミュニティを利用する
Unityではコミュニティ活動が盛んに行われています。そのため、開発で悩んだことや行き詰まったことがある場合は、積極的に活用しましょう。
コミュニティに疑問点を質問することで、有志たちによる回答を得られます。
④講座を受講すること
より実践的に学習したいなら、Unityの講座を受講するのも効果的な方法です。
セミナーなら講師に直接質問できるため、自己学習では理解しにくい部分も解消しやすく、挫折しにくいのがメリットです。
Unity基礎セミナーでは、Unityの基礎からゲーム開発の方法までを学習できます。カリキュラム内で、実際にサイコロゲームやRPGを作るため、実践力が鍛えられるでしょう。気になる方は、ぜひ詳細をチェックしてみてください。
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Unityとメタバースについてのまとめ
本記事では、Unityでメタバースを開発する方法について紹介しました。Unityには豊富なアセットやSDKが提供されているため、個人でも本格的なメタバース開発が可能です。
VRChatやCluster、Spatialなどの事例からも、その活用範囲の広さがわかるでしょう。今回紹介した方法を参考に、ぜひ自作のメタバースの構築にチャレンジしてみてください。