物流の現場に携わる方の多くが、一度は「人材が足りない」という課題に直面した経験をお持ちではないでしょうか。募集しても人が集まらない、ドライバーが続けられない、物流の現場ではそんな切実な声が目立ち、人材不足の課題が可視化されているのも実感できます。
そこで今回は、物流の人材不足の原因を深掘りしつつ、今すぐ実行できる人材不足5つの改善策をご紹介します。
物流の人材不足のリアル

物流の人材不足は、もはや一部の現場だけの話ではありません。物流業全体に影響が広がっており、配送の遅れや現場の混乱など、日常業務に影響を及ぼす例が各地で増えています。
ここでは、今、物流の現場で起きている人材不足のリアルを3つの視点から見ていきます。
- 人材不足で配送遅延が頻発している
- 人材不足と高齢化が物流の現場を支えている
- 人材不足が採用してもすぐ辞めてしまう事態を招く
人材不足で配送遅延が頻発している
物流における人材不足で、仕分け作業が間に合わずにトラックが倉庫前で待機するという光景が、今の物流の現場では日常になりつつあります。遅延が重なると取引先からの信頼を損ねる可能性もあり、現場責任者の多くが「このままでは持たない」と危機感を強めています。
人材不足だけでなく、教育体制の弱さや属人化など、さまざまな課題が絡んでいるのが現状です。
人材不足と高齢化が物流の現場を支えている
国土交通省の調査によると、大型トラック運転手の平均年齢は年々上がっており、2020年には50歳に迫る水準です。40〜54歳の中年層が全体の約半数を占める一方で、若年層はごくわずか。
参照:物流の現状:トラック輸送の担い手数の推移|我が国の物流を取り巻く現状と取組状況(経済産業省・国土交通省・農林水産省)
物流の現場は体力が必要な仕事であることに加え、待遇や働き方に課題が残るため、若い人材の定着が進まず、結果として深刻な人材不足に直結しています。
人材不足が採用してもすぐ辞めてしまう事態を招く
採用活動に力を入れても、1年もたない若手人材が少なくありません。ミスマッチの原因は、仕事内容の伝わりにくさや、教育・フォロー体制の不足にあります。
物流の現場に入ってすぐに責任の重い作業を任された結果、早期離職につながるケースもあります。育成とサポートの仕組みが不十分なままでは、採用しても続かないという人材不足の悪循環が起きやすくなるのです。
物流の人材不足の原因4つ
物流の人材不足はなぜ依然として深刻なままなのでしょうか。その背景にはいくつかの複雑な原因が絡んでいます。
| 人材不足の原因 | 人材不足の内容 |
| ①少子高齢化&若年層の物流離れ | 若手労働力の減少、高齢者に依存する構造 |
| ②長時間労働×低賃金のアンバランス | 拘束時間に対して報酬が見合わない |
| ③EC拡大による配送量増加 | 宅配数が急増し、物流の現場負担が増加 |
| ④属人化・アナログ業務の限界 | マニュアル不備、経験に頼る運用が人材育成の妨げに |
①少子高齢化&若年層の物流離れ
先述したように、物流の現場では、若年層の採用が難しくなっており、そもそも労働人口自体が減っているのが実情です。進学率の上昇により、高卒後すぐに働く層も減少。
企業も求人を出すだけでは人が集まりにくく、長く働いてもらう仕組みづくりまで手が回っていないケースが多く見られます。その結果、育成や定着への投資が後手に回り、人材不足の解消が進みにくくなっています。
②長時間労働×低賃金のアンバランス
https://www.youtube.com/watch?v=AEhk-DOwxLg
物流の現場では、長時間労働の一方で、報酬がそれに見合っていないという声が根強くあります。特にドライバーは、荷待ちや積み下ろしを含めて拘束時間が長く、歩合制や深夜手当に頼る給与体系では安定収入が得にくいのが現実です。
このような待遇のアンバランスは、若年層の定着を阻み、人材不足をさらに深刻化させる一因となっています。さらに、元請けから下請けへの過剰な負荷も改善を難しくしており、構造的な課題が根を張っています。
③EC拡大による配送量増加
コロナ禍を契機にEC市場は急拡大し、それに伴って宅配件数も年々増加しています。経済産業省の調査によれば、宅配貨物運送業の指数は2018年から2025年にかけておよそ20%上昇しており、業界の需要の高まりが数字にも表れています。

さらに追い打ちをかけたのが「2024年問題」と呼ばれる法改正です。ドライバーの時間外労働に上限が設けられ、業務の進め方そのものが見直しを迫られています。
そのため、仕事は増えるが時間は減るという状況に物流の現場が疲弊し、人材不足がさらに加速しています。
④属人化・アナログ業務の限界
物流の現場では、経験者の勘と慣れに頼った属人的な運用が依然多く、業務のマニュアル化や標準化が進みにくいのが課題です。また、紙ベースの帳票や手作業の入力など、アナログな運用が残っているため、新人が業務を引き継ぎにくく、人材育成の障壁にもなっています。
こうした非効率な仕組みが、人材不足の見えにくさを生み出しているともいえるでしょう。
物流の人材不足を今すぐ改善するための5つの具体策
「人材不足なのは分かっているけど、何をすればいいのか分からない」という物流の現場も少なくありません。ここでは、実践できて再現性の高い物流の人材不足を改善する5つの対策をご紹介します。
| 物流の人材不足を改善する具体策 | 物流の人材不足を改善する内容 |
| 1.業務フロー見直しとシステム化 | 作業効率化、業務の見える化 |
| 2.ロボットや自動倉庫の活用 | 単純作業の自動化、省人化サポート |
| 3.多様な人材の採用 | 採用の裾野を広げる |
| 4.柔軟な働き方の導入 | 時短・フレックス制などで定着率向上 |
| 5.人材育成と仕組みづくり | 教育体制とフォロー体制の整備 |
1.業務フロー見直しとシステム化で効率化を行う
人材不足の中で人員を回すには、業務の見える化が必要です。作業手順や動線を整理するだけでも、無駄を省けます。
近年は中小企業でも導入しやすい業務管理システムが増えており、コスト面のハードルも下がってきました。小さな改善の積み重ねが、人材不足に強い物流の現場づくりにつながります。
2.ロボットや自動倉庫の活用で人材を補う
人材不足が深刻化する中、省人化の選択肢として注目されているのがロボットや自動倉庫です。ピッキングや搬送などの単純作業を自動化することで、大幅な工数削減が可能です。
すべてを機械に任せる必要はありませんが、「人がやるべき作業」と「機械に任せる作業」を分ける発想が重要です。補助金を活用すれば初期投資も抑えられます。
3.多様な人材の採用で裾野を広げる
これまで物流の現場といえば、「体力に自信のある男性」というイメージが強かったかもしれません。しかし、女性やシニア、外国人労働者など、採用の裾野を広げることで、人材不足の緩和につながります。
言語や文化の壁はありますが、教育体制を整えることで対応は可能です。多様な人材が活躍できる物流の現場づくりが、持続的な採用力を支えます。
4.柔軟な働き方の導入で定着率を上げる
「採用しても辞める」が続く物流の現場では、働き方の見直しが急務です。時短勤務やフレックス、週休3日制など、少しの工夫で続けられる職場に変えられます。
すべてに適用できなくても、部分導入で十分な効果が見込めます。無理なく働ける環境こそ、人材不足を改善する最大のポイントです。
5.人材育成と定着させる仕組みをつくる
未経験者が多い物流の現場では、初期教育と定着支援がカギです。「物流の現場に放り込まれて終わり」では離職に繋がってしまい、人材不足の悪循環を招きかねません。
OJT担当の明確化やマニュアル整備、習熟度チェックなど、小さな配慮が安心感につながります。動画教材やスマホ対応の教育ツールも増えており、短期間での戦力化が現実的になってきました。
本気で物流の人材不足を変えるならDX・AI育成研修

ご紹介した人材不足の改善策を支えるのが、物流の現場でテクノロジーを使いこなせる人材の存在です。業務の自動化が進む今、DXやAIを理解し、物流の現場とシステムをつなげる人材の有無で、企業の競争力は大きく左右されます。
DX・AI人材育成研修サービスでは、物流の現場に合ったカリキュラムが用意されており、未経験者でも安心して学べます。最初にDXレベルチェックで自社のスキル状況を可視化し、階層ごとに最適なプログラムを設計するので、短期集中から中長期育成まで柔軟に対応可能です。 eラーニングやカスタマイズ研修にも対応し、日常業務と並行してスキルアップが進められる点も特長です。
「話だけでも聞いてみたい」という方には、無料相談や資料ダウンロードもおすすめです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
物流の人材不足をDX化で解消した企業の成功事例

物流の人材不足という課題を、人を増やす以外の方法で乗り越えた企業があります。ここでは、実際にDXを導入して人材不足を解消した企業の取り組みをご紹介します。
配送網最適化でコスト削減
ファミリーマートでは、2022年からAIを活用した配送シミュレーターを自社開発し、物流効率の改善に取り組んでいます。全国の定温センターにおいて本格稼働した仕組みにより、配送コース数とトラック台数をそれぞれ約1割削減する効果がありました。
こうした取り組みにより、人材不足でも無理なく回せる運行体制が整い、ドライバーの負担軽減にもつながっています。
参照:物流2024年問題に対する配送ドライバー確保への取り組み|ファミリーマート
倉庫ロボット導入で作業効率アップ
日本通運は、ロボットベンチャーのRapyuta Roboticsと連携し、2019年から倉庫内ピッキング業務へのAIロボットの導入を進めてきました。最初の実証実験では、人とロボットが安全に共存できることも確認され、人材不足が深刻な物流の現場でもスムーズに活用できる可能性が示されました。
この検証を経て、物流の現場の負荷軽減と、生産性の底上げにつながる取り組みとして注目されています。
参照:日通/物流センターに協働型ピッキングロボット導入へ|物流ニュースLnews
需要予測AIで作業時間75%削減
アスクルでは、物流センターと補充倉庫間で商品を移動させる業務に、需要予測AIを導入しました。AIが過去の出荷データや需要動向をもとに精度の高い輸送計画を自動生成し、1日あたりの作業工数は約75%も削減され、出荷・入荷の作業も約30%効率化されました。
また、賞味期限などがある商品に関しても、必要な量だけを補充倉庫からタイミングよく搬入できるようになり、フォークリフトでの構内作業が約15%削減されるなど、人材不足が続く物流の現場の負荷軽減にも大きく貢献しています。
参照:アスクルが商品の「横持ち計画」にAIを適用、入出荷作業の工数を30%削減|日経XTECH
物流の人材不足を変える!3つのコツ
DX・AI人材育成は重要ですが、それだけでは人材不足は改善しません。以下では、物流の現場ですぐに取り入れやすい人材不足を変える3つのコツを紹介します。
- 育てる姿勢を見せて優秀層を引き寄せる
- スキルアップの道筋を立て人材を定着させる
- DXを内製化して育成と実践をつなげる
①育てる姿勢を見せて優秀層を引き寄せる
人材不足が深刻化する中、今の求職者は、ただ働くだけでなく、成長できる環境を求めています。だからこそ、企業がDXやAI育成に取り組んでいる姿勢を採用時点で伝えることが大切です。 例えば、「DX研修あり」「AIスキルが学べる物流の現場」という言葉を求人票に入れるだけでも、応募の反応が変わることがあります。
また、SNSや採用ページで研修風景や事例を紹介すれば、「この会社なら育ててもらえそう」と感じてもらいやすくなります。
大阪で受けられるおすすめ企業研修6選については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
②スキルアップの道筋を立て人材を定着させる
人材不足を解消するには、採るだけでなく、続けてもらうことが欠かせません。そのためには、入社後のキャリアパスを明確にし、将来の見通しが持てるようにする必要があります。 例えば、1年目は物流の現場、2年目はリーダー研修、3年目には改善業務と段階を踏んだスキルアップ設計があると、社員も「ここで成長できる」と実感しやすくなるでしょう。
さらに、DXスキルと連動した育成制度を導入すれば、物流の現場でのIT人材不足の解消にもつながります。
③DXを内製化して育成と実践をつなげる
研修で学んだことを現場で活かせるかどうかは、DXの取り組みをできるだけ内製化することにかかっています。 例えば、研修で得た知識を使って、物流の現場で業務改善を企画・実行できる環境があれば、学びが実体験となり、成長実感も深まります。
このように、育成と実践を結びつける内製化の仕組みは、人材不足に悩む物流の現場でも即戦力を生みやすくなるという利点があります。 また、社内でスキルを活かせる機会があるほど、人材不足は解消しやすくなるのです。
今後の物流が描く人材不足を解消する環境

物流では今後、省人化や自動化がますます進むと見られていますが、それは人を減らすことが目的ではなく、物流の人材不足を解消するための手段です。ロボットやAIが単純作業を担い、人はより創造的な業務に集中できる人間中心の自動化が理想とされつつあります。
また、国や自治体の支援施策、補助金制度も活用することで、こうした取り組みのハードルは確実に下がってきています。2030年には物流の人手構成が大きく変化すると予測されており、今の人材不足の改善策がその未来を左右することは間違いありません。
DXやAI育成は、そのスタートラインとして、物流の人材不足を解消する大きな鍵になるでしょう。
物流の人材不足は育てる力で乗り越えられる
物流の人材不足はすぐに解決できる問題ではありませんが、採用の見直しや、育成体制の整備、柔軟な働き方、技術の活用など打つ手はあります。どれも一度に完璧を求める必要はなく、少しずつ取り組むことで物流の人材不足は確実に変わっていくでしょう。
中でもDX・AI人材育成は、変化に強い物流の組織づくりのベースになります。育った人材が物流の現場で力を発揮し、その姿がまた次の人を呼び込む良い循環が生まれれば、人材不足にも揺るがない体制が見えてくるはずです。
いま、目の前の業務に追われているからこそ、まずはできる人材不足の改善策から始めてみませんか?