「ICT」と聞くと、ITの一種だろうと何となく理解していても、実際にはどんな意味を持つのか知らない方もいるでしょう。たしかに、ITやIoT、ICなど似た略語が多いこともあり、混同してしまいがちな言葉です。
そこで本記事では、ICTの正式名称や意味、ITやIoTとの違い、教育や医療といった身近な活用例まで段階的に解説します。ICTについてわかりやすく学びたい方は、ぜひご一読ください。
ICTとは?

ICTとは、人と情報を結びつけるための総合的な技術のことです。
電話やインターネットなどの通信手段と、コンピュータによる情報処理を統合することで、情報の取得・保存・送信・活用を可能にします。
例えば、私たちが日常使っているSNSやGoogleドキュメント、LINE、さらにはテレビ会議や遠隔学習といったサービスは、ICTにより実現しています。
- ICTとは何の略?
- 総務省が目指すSociety 5.0とICT
①ICTとは何の略?
ICTは、「Information and Communications Technology」の略です。読み方は「アイシーティー」で、日本語では「情報通信技術」という意味があります。
ICTという言葉の広まり
「情報通信技術」という表現自体は1980年代から研究者間で使われていましたが、「ICT」という略語が広まったのは1997年、デニス・スティーヴンソンがイギリス政府へ提出した報告書がきっかけです。
その後2000年に教育カリキュラムで採用され普及しましたが、2012年には王立学会が「否定的な意味合いが多い」として学校での使用をやめるべきと提言しました。
以降、イギリスの教育現場では「コンピューティング」という呼び方が主流になっています。一方で、国連をはじめ世界各国では、今もICTという用語が使われ続けています。
②総務省が目指すSociety 5.0とICT

Society 5.0とは、総務省が掲げる「デジタル技術を活用して課題解決と豊かさを両立させる未来社会」のことです。
人類の歴史を振り返ると、以下の表のようになります。
| 時代 | Society | 時期 | 特徴的な技術 |
| 狩猟社会 | Society 1.0 | 人類誕生 | ー |
| 農耕社会 | Society 2.0 | 紀元前13000年 | ー |
| 工業社会 | Society 3.0 | 18世紀末 | 第1次産業革命(蒸気機関、軽工業の誕生) |
| 19世紀後半 | 第2次産業革命(重化学工業、電力・石油) | ||
| 情報社会 | Society 4.0 | 20世紀後半 | 第3次産業革命(コンピューター、インターネット) |
| 創造社会 | Society 5.0 | 21世紀前半 | 第4次産業革命(AI、IoT、ICT、DX化の促進) |
上記画像の様に、狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)を経て、いま私たちは5番目となる新しい創造社会へ進もうとしています。これが「超スマート社会」とも呼ばれるSociety 5.0です。
その中心にあるAIやIoT、ICTなどの先端技術を駆使することで、少子高齢化や環境問題といった社会的な課題を克服するデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。
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IT・IoT・ICとの違い

ICTとIT・IoT・ICは、それぞれ密接に関わり合う技術ですが、役割や対象に違いがあります。まず、IT・IoT・ICの概要を一覧表で比較してみましょう。
| 技術名 | 正式名称 | 意味 | 役割 | 対象 |
| IT | Information Technology | 情報技術 | コンピュータによる情報処理 | 情報 |
| IoT | Internet of Things | モノのインターネット | モノをネットでつなぎ、情報を通信 | モノ (家電・センサー) |
| IC | Integrated Circuit | 集積回路 | トランジスタなどをまとめた電子部品の基盤 | 製品(部品) |
IT|技術の土台
まずITは、情報を扱うための道具や仕組みのことです。ITは、パソコンやサーバー、ソフトウェアなど、情報を整理・処理・保存する基盤のような存在で、ICTやIoTといったすべてのデジタル技術を含みます。
ICT|人をつなぐ仕組み
そこに通信の要素を加え、人と人がコミュニケーションをとれるようにしたのがICTです。例えば、ITが「土台」で、ICTはその上で「人をつなぐ仕組み」と考えると良いでしょう。
IoT|モノをつなぐ技術
一方、IoTは人ではなくモノ同士をつなぐ技術です。スマート家電やウェアラブル端末、紛失防止タグなど、身の回りの製品をネットにつなぎ、互いに情報をやり取りできるようにします。
ICTが「人をつなぐ」のに対して、IoTは「モノをつなぐ」のがポイントです。
IC|物理的な基盤
最後にICですが、これは情報技術そのものを支える電子部品のことです。小さなチップの中にトランジスタや抵抗が集まっていて、CPUやメモリ、ICカードなどに使われます。
ITやIoTのようなサービスではなく、あくまでハードウェアの土台として、技術全体を支える存在です。
このように、ICT・IT・IoTは情報技術の応用や仕組みであるのに対し、ICはその土台となる物理部品を指します。それぞれの性質を理解すると、どんな場面でどの技術が使われるのかが自然に見えてくるでしょう。
ICTを導入する4つのメリット
ICTをビジネスに導入すると、組織の働き方や企業力強化、顧客満足度向上など多彩なメリットがあります。ここでは、4つのメリットを見ていきましょう。
- 単純作業からの解放
- 勤務の自由度向上
- 情報共有の高速化・判断力アップ
- 顧客対応力の強化
①単純作業からの解放
ICTを使うと、単純作業から解放されるというメリットがあります。
例えば、データ入力や報告書作成といったルーティンワークをシステムに任せれば、1日2時間、1ヶ月では約40時間の膨大な時間をカットできます。この時間は、1ヵ月の残業時間としても多すぎるほどです。
しかし、ICTが代行すれば別の業務に多くの時間を割けるようになり、業務効率・生産性向上、あるいは残業時間の削減という多彩なメリットにつながります。
②勤務の自由度向上
ICTを活用すると、勤務の自由度が高まるというメリットがあります。
例えば、毎日の通勤に片道1時間かかっていたとしても、ICTで業務をオンライン化すれば、自宅やサテライトオフィスで作業できるようになります。これは、1ヶ月で約40時間、移動時間をまるまる業務や休息に充てられる計算です。
この自由は、ただ時間を節約できるだけでなく、自分に合った環境で集中して作業できる安心感を生みます。結果として、仕事の質やアイデアの出方にも違いが生まれ、チーム全体の成果向上も期待できるでしょう。
③情報共有の高速化・判断力アップ
ICTを導入すると、情報をクラウドで一元管理でき、必要な資料やデータに誰でもすぐアクセスできるようになります。
例えば、会議前に資料を探す時間があったとしたら、その時間を削減でき、議論や意思決定に集中できるようになります。情報が整理されるのはもちろん、情報の透明性が高まることで、チーム全体の動きがスムーズになり、判断スピードや行動力も自然に向上します。
④顧客対応力の強化
ICTを活用すると、顧客データを整理・分析でき、問い合わせや要望への対応が迅速かつ正確になります。
例えば、顧客の過去の購入履歴や嗜好をすぐに確認できれば、対応時間を短縮できるだけでなく、個別に合わせた提案も可能です。特に、1日に数十件の対応を行う場合、大きな時間差と満足度の差になります。
この「顧客の期待を先読みする力」が、競合との差別化や信頼関係の強化に直結し、長期的なリピーター獲得という大きなメリットを生みます。
ICTの身近な活用例
ICTは私たちの身近な生活でどんどん広がっています。ここでは、5つの分野での活用例を見てみましょう。
- 教育|GIGAスクール構想と学習環境の公平化
- 介護|センサー活用による書類仕事の削減
- 医療|電子カルテと遠隔診療で高水準のケアを実現
- 防災|情報共有システムによる迅速・正確な判断
- 建築|3D重機による施工精度・効率化向上
①教育|GIGAスクール構想と学習環境の公平化
ICT教育の代表例が、2019年から文部科学省が進める「GIGAスクール構想」です。この取り組みでは、子どもたち一人ひとりにタブレット端末が配付され、デジタル機器を使った授業が行われています。
これにより、教材は電子データで配信され、電子黒板に映し出される動画や音声を活用できるようになりました。結果として、席の場所による学習環境の差がなくなり、誰もが公平な環境で学習に取り組めるようになっています。
また、提出物の管理がアプリで簡単になるなど、効率化も進んでいます。端末の動作不良といった課題はありますが、ICT教育は子どもたちの未来構築に重要な教育形態として、着実に全国に広がりを見せています。
②介護|センサー活用による書類仕事の削減
介護の現場も、ICTで大きく変わろうとしています。現在、介護施設では、事業所ごとに記録の書き方がバラバラで、書類仕事に追われて長時間労働になりがちです。
加えて、人件費率が6割を超えており、特別養護老人ホームでは、本来3対1の配置基準があるにもかかわらず、実際には人材不足が常態化しています。しかし、ICTやAI、センサー、ロボット技術を使えば、記録の標準化などのデジタル化により、質を落とさず人材不足を解消できます。
例えば、書類記述の負担を減らすための、音声を使った記録作成などです。今後、ICTを活用したペーパーレス化、データヘルス化はさらに広がりを見せると予想されています。
③医療|電子カルテと遠隔診療で高水準のケアを実現
医療分野におけるICTの代表例は、電子カルテの普及と遠隔医療です。
電子カルテにより医師や看護師が患者情報をリアルタイムで共有でき、検査の重複や診療記録の間違いが減りました。遠隔診療は通院が困難な方に対する受診機会確保・初期対応の迅速化にも寄与し、加えて移動時間も削減できます。
個人情報保護やシステム障害への対策、現場スタッフの習熟といった課題は残りますが、政府の支援もあり、質の高い医療を効率的に届ける取り組みとしてICTの活用現場は広がり続けています。
④防災|情報共有システムによる迅速・正確な判断
ICT防災の代表例が、水害対策で導入されている「情報共有システム」です。
この仕組みでは、雨量や水位の観測データ、現場から送られる写真、活動の進捗状況などが地図上に一元表示され、スマートフォンからも確認できます。
従来は電話で何度も同じ情報を伝える必要がありましたが、このシステムを使えば一度の発信で関係者全員に共有可能です。その結果、情報の重複や伝達漏れが減り、迅速で正確な判断につながります。
さらに、バラバラに扱われていた情報を一つの画面で整理できるため、水防団の限られた人員でも効率的に活動できるようになりました。ICTの活用は、団員の高齢化や人数減少といった課題を解決し、地域の防災力を高める取り組みとして広がりを見せています。
⑤建築|3D重機による施工精度・効率化向上
建設現場では、業務効率化に貢献するICT重機が登場しています。例えば、GPSと3D設計データを組み合わせた「3Dマシンコントロール重機」は、データに基づいて自動で整地や掘削を行うショベルカーです。
このICT重機により、これまで必要だった目印の杭や細かな修正作業が不要になり、若手作業員でもベテラン並みの精度で施工が可能となりました。同時に、作業時間が従来より大幅に短縮されるケースも増えています。
レンタル費用や操作習得といった課題は残りますが、人手不足に悩む建設業界にとって、大きな可能性を秘めた技術です。
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建設現場における「3Dマシンコントロール重機」の活用は、ICTによるDX成功事例の一つです。
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ICTについてまとめ
ICTは未来を創る技術で、今後も社会の変革をリードするために、国でも積極的な投資・政策推進に取り組んでいます。しかし、ICTを推し進めるためには、その推進役を担うDX人材が必須です。
DX人材育成に迷った際には、基礎から学べるセミナーを利用するなどして、段階的にDX化を進めていきましょう。