CADソフトウェアの代名詞ともいえるのがAutoCADシリーズです。その最新版であるAutoCAD2023は、過去のバージョンからさらに進化を遂げ、これまで以上に使いやすさと高機能を両立したツールとなりました。この記事では、AutoCAD2023について基本を説明したあとで、主な機能や今までのバージョンとの違いについて解説します。
AutoCAD2023とは?
AutoCAD2023は、製図、設計、エンジニアリングなど、さまざまな業界で幅広く使われているCADソフトウェアの最新版です。CADとは、Computer Aided Designの略で、コンピュータを使って製図や設計を行うためのソフトウェアを指します。AutoCADはこのCADソフトウェアの中でも、非常にポピュラーなもので、業界を問わず幅広いユーザーから支持を受けています。
AutoCAD2023は、ベクター画像をベースとした2Dドラフトと、リアルタイムの3Dモデリングをサポートします。2Dドラフトとは、平面的な図面を作成する機能を指し、たとえば建築物の平面図などがこれにあたります。一方、3Dモデリングは立体的な図形を作成する機能で、例えば車や建築物の立体図などを作成する際に使用します。これらの機能は、設計者が自身のアイデアを具体的な形にする上で非常に重要です。
また、クラウド対応も強化されています。これにより、自宅や外出先からでも安全に作業が行え、データの管理も容易になりました。たとえば、設計図を作成中に外出することになった場合でも、自宅のPCで作業を開始し、外出先のPCでその続きを行うことが可能になります。
AutoCAD2023の主な機能
ここで、AutoCAD2023の主な機能について解説します。
マークアップ読み込み・マークアップアシスト
マークアップとは、図面に対する注釈や修正の提案を記入することです。2023年版の新機能では、機械学習を活用してPDF図面や紙図面の画像データからマークアップを検出し、それをデジタル形式に変換することが可能となりました。この機能により、PDFやPNG、JPEGなどのフォーマットの図面画像データを読み込み、それをトレースワークスペースで図面の上にオーバーレイすることができます。これにより、手作業での図面改定作業が大幅に削減され、図面の修正やアップデートがより容易になります。
マイインサイト・マクロアドバイザ
マクロとは一連のコマンドの自動化を指します。AutoCADでは、ユーザーが繰り返し実行する一連の作業をマクロとして記録し、必要な時に再実行することができます。マイインサイト・マクロアドバイザは、このマクロ作成を自動化する機能です。ユーザーが実行する作業のパターンを機械学習で学習し、それを元に最適なマクロを生成します。生成されたマクロは、試行、保存、リボンへの配置が可能で、これにより一部の作業の自動化と生産性の向上が期待できます。
トレース
トレースは元の図面に影響を与えることなく、その上に新たな図面要素を追加する機能です。2023年版では、トレース機能が強化され、デスクトップ版AutoCADでもトレースを作成できるようになりました。Webアプリやモバイルアプリ、デスクトップ版AutoCADを使って既存の図面に新たな注記やマークアップを追加することができます。
カウント
カウントは特定のオブジェクトまたはブロックの数を自動で集計する機能です。2023年版では、このカウント機能が強化され、指定した領域内のオブジェクトまたはブロックの数を自動的に集計できるようになりました。これにより、必要な部品の数などを簡単に計算できるようになり、図面作成時の手間を減らすことが可能となりました。
シェア
シェアは、図面データを他のユーザーと共有する機能です。2023年版では、このシェア機能が強化され、シェアされた図面をモバイルデバイスやWebブラウザで直接開くことができるようになりました。また、オーナーはシェアした図面の編集権限を制御できるため、図面のセキュリティを維持しつつ、円滑な図面共有が可能となりました。
Push to Autodesk Docs
これは、AutoCADからAutodesk Docsへ直接図面をアップロードする機能です。Autodesk Docsは、設計データの一元管理や共有を行うクラウドベースのプラットフォームで、この新機能により、AutoCADから直接Autodesk Docsへ図面をアップロードできるようになりました。
図面タブの改善
図面タブは、同時に複数の図面を開いている時に、それぞれの図面をタブ形式で管理する機能です。2023年版では、オーバーフローメニューを使用して、開いている全ての図面を視覚的に確認できるようになりました。これにより、複数の図面を効率的に管理することが可能となりました。
CUTBASE[基点切り取り]
CUTBASEは、クリップボードを経由したオブジェクトの切り取りと、基点を指定した貼り付けを行う機能です。2023年版では、オブジェクトの移動を基点から行えるようになりました。これにより、オブジェクトの移動がより直感的で簡単になりました。
ポリラインの延長
ポリラインとは、直線や曲線を連続して描いた線形状のことです。2023年版では、ポリラインのグリップオプションに[頂点を延長]が追加されました。これにより、選択した端点からポリラインを延長する方向に新しい頂点が追加されます。
マルチ引出線の機能強化
マルチ引出線は、文字列を指すための線を複数描く機能です。2023年版では、マルチ引出線の新たなオプションが追加されました。この新オプションにより、マルチ引出線の矢印部分を個別に移動させたり、形状を変えたりすることが可能となりました。これにより、図面に対する注釈の自由度が向上しました。
以上がAutoCAD2023の主な機能の特徴です。これらの機能は、図面作成の効率性を向上させ、より高度な作業を可能にします。設計業務を行う際には、これらを十分に活用することで作業の生産性を向上させることが可能となります。
以上に加えて、2Dワイヤフレーム表示スタイルのパフォーマンス向上、最新のGPUおよびマルチコアCPUを活用した3Dグラフィックスシステムの導入が特徴です。また、AutoCAD LISP APIをAutoCAD Webアプリで使用可能になるなど、一部の対象ユーザーにとって有用な機能強化も行われています。
今までのバージョンとの違い
今までの過去バージョンと比べて、AutoCAD2023では特に「クラウド対応」の強化が顕著です。データ保存だけでなく、オンラインでの協働作業やリモートアクセスが一層容易になりました。例えば、遠隔地にいるチームメンバーとリアルタイムで設計図の共有やフィードバックを行うことが可能になります。
また、「自由形状モデリング」の導入により、3Dモデリングの表現力が大幅にアップしました。具体的には、複雑な形状でも自由自在にモデルを作成することができるようになったのです。これにより、よりリアルなモデルの作成や、設計の幅が広がります。
さらに、システム要件が変更されており、最新のハードウェア環境を活用して更なるパフォーマンスの向上が図られています。これにより、大規模なデータの操作や、高度な計算処理のスムーズさが向上しました。
AutoCAD2023の進化した機能で新たな可能性を
AutoCAD2023は、進化した機能と利便性により、新たな設計の可能性を切り開きます。特にクラウド対応の強化や自由形状モデリングの導入により、自由で多様な設計が可能になり、各自の作業スタイルに合わせた使い勝手の良さも実現しています。そして、これらの新機能は、初心者からプロのエンジニアまで幅広く受け入れられることでしょう。