エクセルは、日常業務から複雑な分析まで幅広く活用できる便利なツールです。しかし、基本的な使い方や機能を十分に理解していないと、そのポテンシャルを最大限に引き出せません。
本記事では、エクセルの基本操作から計算機能、データ分析、グラフ作成、さらには業務効率を向上させる技術などを解説します。
エクセルの基本機能
エクセルを使いこなすためには、まず基本的な機能を理解することが重要です。セルやワークシート、ワークブックといった構成要素からデータの入力・編集方法まで、基礎を押さえることで、エクセルの活用範囲が大きく広がります。
この章では、エクセルの基本機能について見ていきましょう。
セル・ワークシート・ワークブックとは
セル、ワークシート、ワークブックは、エクセルの基本的な構成要素です。
セルはデータを入力する最小単位、ワークシートはデータを整理するページ、ワークブックは複数のシートをまとめたファイル全体を指します。
セルの編集方法
セルは、エクセルでデータを入力する最小単位です。セルをクリックして直接文字や数値を入力したり、既存のデータを編集したりすることができます。
編集モードにするには、セルをダブルクリックするか、セルを選択してからF2キーを押します。
ワークブックとワークシートの違い
ワークブックは、エクセルで作成する1つのファイル全体を指します。一方、ワークシートは、その中に含まれるページであり、データを整理する単位となります。
以下の表に、違いをまとめました。
項目 | ワークブック | ワークシート |
---|---|---|
定義 | エクセルで作成する1つのファイル全体 | ワークブック内のページ単位 |
役割 | 複数のデータを一括で管理 | 個別のデータや表を整理 |
構成可能数 | 1つのファイル | 複数のワークシートを含むことが可能 |
操作方法 | ファイルを開閉して操作 | タブをクリックして移動・編集可能 |
1つのワークブックに複数のワークシートを組み合わせることで、異なるデータや分析を効率的に管理できます。
基本的なデータ入力と編集
エクセルの基本機能の1つとして、データの入力と編集が挙げられます。
正確で効率的なデータ入力は、エクセルを活用する上での基礎です。
基本操作①データ入力
セルをクリックしてデータを直接入力します。
エクセルでは数値や文字、日付など、さまざまな形式のデータを扱うことができます。データをスムーズに入力するための基本的な操作を覚えましょう。
以下に、特徴をまとめました。
- セルをクリックして直接入力可能
- 数値、文字、日付など、多様なデータ形式を入力できる
- Enterキーで次のセルに移動しながら入力を続けられる
- Tabキーを使うと右隣のセルに移動できる
操作を活用すれば、効率的にデータを入力し、作業スピードを上げることができます。
基本操作②削除
不要なデータを削除することは、データを整理するうえで重要です。エクセルでは、Deleteキーでセルの内容を削除できます。また、複数のセルを選択し、一気に削除することも可能です。
また、以下の手順のように、Deleteキーではなく右クリックから削除できます。
- 右クリックメニューから「削除」を選択するとセル自体を削除可能
下記はB5を選択
- 隣接するセルを自動的に詰めることができる
下記の通り、どの方向にセルを詰めるか選択
セルの内容を削除するだけでなく、セルそのものを整理することで、データの見やすさや効率性を高められます。
基本操作③コピー&ペースト
同じデータを複数箇所で使用する場合は、コピー&ペースト機能を活用します。シンプルな操作でデータを複製し、作業効率を向上させましょう。
以下に、手順をまとめました。
- Ctrl+Cでデータをコピー
下記はB1を選択
- Ctrl+Vで貼り付け先にデータをペースト可能
下記はB1をC1にペースト
- 右クリックから「貼り付けオプション」を使うと形式の変更や値のみの貼り付けが可能
柔軟なコピー&ペーストの使い方を習得すれば、エクセル作業がより便利でスムーズになります。
エクセルの計算機能と関数
エクセルの強力な計算機能と多様な関数は、データ分析や業務効率化に欠かせません。基本的な数学関数から条件付き関数、日付に関する便利な関数まで、使いこなせるようになれば、複雑な計算やデータ処理が驚くほど簡単になります。
本章では、それぞれの基本的な関数の機能を解説します。
数学関数
エクセルには、基本的な計算を効率的に行うための便利な数学関数が数多く用意されています。
この章では、下記の数学関数を解説します。
関数名 | 説明 |
---|---|
SUM | 範囲内の数値を合計 |
AVERAGE | 範囲内の平均値を求める |
MAX | 範囲内の最大値を取得 |
MIN | 範囲内の最小値を取得 |
合計値や平均値の計算、最大値や最小値の取得など、日常的なデータ処理に役立つ機能を理解して活用することで、作業効率を向上させることができるでしょう。
数学関数①SUM
合計値を求める関数です。選択した範囲内の数値をすべて加算して、合計を表示します。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=SUM(」と入力する
下記は、B6に入力
- 数値を合計したいセル範囲を選択し、「)」で閉じる
下記は、B1~B5を選択
- Enterキーを押して結果を確認する
SUM関数を使うと、大量のデータでも瞬時に合計を計算できます。
数学関数②AVERAGE
平均値を計算するための関数です。指定したセル範囲内の数値の平均を求めます。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=AVERAGE(セル範囲)」と入力する
下記は、B6に入力
- 平均を計算したいセル範囲を選択し、「)」で閉じる
下記は、B1~B5を選択
- Enterキーを押して結果を確認する
平均値の算出は、データの傾向を把握する際に非常に便利です。
数学関数③MAX
最大値を求める関数です。指定したセル範囲内の数値の中で最も大きな値を取得します。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=MAX(セル範囲)」と入力する
下記は、B6に入力
- 最大値を求めたいセル範囲を選択し、「)」で閉じる
下記は、B1~B5を選択
- Enterキーを押して結果を確認する
データセット内の最大値をすぐに特定するのに役立ちます。
数学関数④MIN
最小値を求める関数です。指定したセル範囲内の数値の中で最も小さい値を取得します。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=MIN(セル範囲)」と入力する
下記は、B6に入力
- 最小値を求めたいセル範囲を選択し、「)」で閉じる
下記は、B1~B5を選択
- Enterキーを押して結果を確認する
データの最小値を見つけたい場合に活用できます。
条件付き関数
条件付き関数は、データを特定の条件で絞り込み、結果を取得したり計算を行うための便利な機能です。
この章では、下記の条件付き関数を解説します。
関数名 | 説明 |
---|---|
IF | 条件に応じて異なる値を返す |
COUNTIF | 条件に一致するセルの数をカウントする |
SUMIF | 条件に一致するセル範囲の合計を計算する |
判断が必要な場面や、特定の条件に合うデータだけを集計したいときに活用することで、より効率的に作業を進められます。
条件付き関数①IF
条件に応じて異なる結果を表示する関数です。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=IF(条件, 真の場合の値, 偽の場合の値)」と入力する
以下は、B3の値が「3」の時、「〇」を、それ以外の時は「×」を返すよう指示
- Enterキーを押して結果を確認する
B3の値は「3」のため、〇を返す
IF関数は、シンプルな条件判断から複雑なロジックまで幅広く対応できる柔軟な機能です。
条件付き関数②COUNTIF
指定した条件に一致するセルの数をカウントする関数です。たとえば、特定の文字列や数値がデータ内でいくつ存在するかを簡単に調べられます。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=COUNTIF(範囲, 条件)」と入力する
下記の場合、B1~B5までに「3」がいくつあるか確認
- Enterキーを押して条件に一致するセルの数を確認する
B3とB4セルが「3」のため、2を返す
COUNTIF関数を使うことで、特定の条件に合致するデータの分布を把握することができます。
条件付き関数③SUMIF
条件に一致するセル範囲の数値を合計する関数です。特定の条件に基づいてデータを集計したい場合に非常に役立ちます。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=SUMIF(範囲, 条件, 合計範囲)」と入力する
下記の場合、B1~B5に「りんご」がある場合、対応するC1~C5の合計するように指示
- Enterキーを押して条件に合致したセル範囲の合計を表示する
「りんご」は4つあるため、800の値を返す
SUMIF関数は、特定の条件付きで数値を集計できるため、大量のデータを効率よく管理するのに適しています。
日付関連関数
日付関連関数は、日付や時間を扱う作業において非常に便利です。
この章では、下記の日付関連関数を解説します。
関数名 | 説明 |
---|---|
DATE | 年、月、日を組み合わせて日付を作成 |
TODAY | 現在の日付を返す |
EOMONTH | 指定した月の月末日を求める |
日付を指定して入力したり、現在の日付を自動的に取得したり、月末の日付を計算したりする際に役立ちます。
日付関連関数①DATE
指定した年、月、日を組み合わせて日付を生成する関数です。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=DATE(年, 月, 日)」と入力する
下記の場合、1992/9/24を指定
- Enterキーを押して結果を確認する
DATE関数を使えば、動的に日付を作成することができ、計算や比較に応用できます。
日付関連関数②TODAY
現在の日付を自動的に取得する関数です。作業時点の日付を表示したい場合に便利で、セルの内容は毎日自動的に更新されます。以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=TODAY()」と入力し、引数を入れずにそのままEnterキーを押す
- 結果として当日の年月日が表示される
TODAY関数は、現在の日付を基準にした計算やスケジュール管理に役立ちます。
日付関連関数③EOMONTH
指定した月の末日を求める関数です。締め日や期日を計算する際に非常に有用です。
以下に、手順をまとめました。
- 数式バーに「=EOMONTH(」と入力する
- 開始日には基準となる日付を指定、月数には指定した基準日からの月の増減を入力する
日付は、DATE関数を使用して入力するか、別の数式や関数の結果を指定して作成する
下記の場合、DATE関数で2025/1/1を指定
- Enterキーを押して結果を確認する
2025/1/1から11カ月後の最終日である、2025/12/31が表示
EOMONTH関数は、月末処理や日付範囲の計算を効率化するために役立つ便利な機能です。
エクセルのデータ分析機能
エクセルは、膨大なデータを整理して分析するための強力なツールです。
ピボットテーブルやデータフィルター、ソート機能を活用すれば、必要な情報を効率的に抽出し、データの傾向やパターンを簡単に把握できます。
ピボットテーブル
ピボットテーブルは、データを集計、分析するためのエクセルの機能です。大量のデータを整理し、視覚的にわかりやすい形で表示するのに役立ちます。
以下に、手順をまとめました。
- データ範囲を選択する
下記の場合、B1~B5を選択
- メニューから「挿入」タブをクリックし、「ピボットテーブル」を選択する
- 作成先を新しいワークシートまたは既存のワークシートから選ぶ
- フィールドリストから行、列、値、フィルターをドラッグして設定する
ピボットテーブルを使えば、複雑なデータも簡単にまとめられ、傾向分析や比較がスピーディに行えます。
データフィルターとソート
データフィルターとソート機能は、必要な情報を抽出したり、データを特定の順序で整理するために便利なツールです。膨大なデータの中から条件に合うものを素早く見つけることができます。
以下に、手順をまとめました。
- データ範囲を選択する
下記の場合、1行目を選択
- メニューから「データ」タブをクリックし、「フィルター」を有効にする
- 各列のフィルターアイコンをクリックして条件を設定する
下記の場合、「りんご」を選択
- OKを押して結果を確認する
ソートを使用する場合は、昇順または降順を選択して並び替えましょう。
フィルターで条件を絞り込んだり、ソートで順序を整えることで、データの視認性が向上し、分析がより簡単になります。
エクセルのグラフ作成機能
エクセルでグラフを作成する手順は非常にシンプルです。まず、グラフ化したいデータ範囲を選択し、「挿入」タブをクリックし、適切なグラフの種類を選んで挿入します。
この章では、それぞれのグラフの特徴を説明します。
主なグラフ①棒グラフ
棒グラフは、データをカテゴリ別に比較する際に最適です。特に、複数の要素を並べて比較する場合や数値の差を視覚的に強調したいときに役立ちます。
たとえば、売上や数量のデータを棒グラフにすると、どのカテゴリが最も大きな貢献をしているかが一目でわかります。また、縦型と横型を選べるため、スペースや用途に応じて使い分けが可能です。
簡単に作成できるため、プレゼン資料やレポート作成にもおすすめです。
主なグラフ②円グラフ
円グラフは、全体に対する各要素の割合を示すのに最適です。データの構成比を視覚的に表現できるため、特定の要素が全体の中でどれだけ占めているかを強調する際に便利です。
たとえば、売上の内訳や予算配分を示す際に使うと、数字だけでは伝わりにくい情報を直感的に理解させることができます。
ただし、データ項目が多すぎると見づらくなるため、要素が少ない場合に使用するのがおすすめです。
主なグラフ③折れ線グラフ
折れ線グラフは、データの変化や傾向を示すのに適したグラフです。特に、時系列データや継続的な数値の推移を視覚的に表現したい場合に有効です。
たとえば、月別売上の推移や成長率の変化を示す際に使うと、データの動きを直感的に理解できます。複数のデータセットを重ねて表示することで、比較もしやすくなります。
データのトレンドを強調したいプレゼン資料や報告書におすすめです。
表機能の詳細を知りたい方は、下記をご覧ください。
さらに便利なExcel機能
エクセルには、基本的な操作や関数以外にも、作業を効率化し、データをより見やすく管理するための便利な機能がたくさんあります。条件付き書式でデータを視覚的に整理したり、マクロやVBAを使って繰り返し作業を自動化することで、日々の業務負担を大幅に軽減できます。
これらの機能を使いこなして、エクセルをさらに活用しましょう。
条件付き書式
条件付き書式は、指定した条件に基づいてセルの書式を自動的に変更する機能です。たとえば、数値が特定の値を超えた場合に強調表示したり、特定の条件に一致するデータを目立たせることができます。
以下に、手順をまとめました。
- 書式を設定したいセル範囲を選択する
下記は、B1~B5を選択
- 「ホーム」タブの「条件付き書式」をクリックする
- 「新しいルール」を選び、条件と書式を設定する
下記は、F列の日付が当日である場合、行全体を緑色にしている
- OKをクリックして適用する
条件付き書式を利用することで、重要なデータを簡単に視覚化でき、作業の効率を高められます。
マクロとVBA
マクロとVBAは、エクセルの操作を自動化するための機能です。
繰り返しの作業や複雑な操作を記録して再現することで、作業時間を大幅に短縮できます。
繰り返し作業の自動化
繰り返し行う作業を自動化することで、業務効率を大幅に向上させることができます。たとえば、毎日のデータ集計や定型フォーマットの作成など、手間のかかる作業を簡略化できます。
以下に、手順をまとめました。
- 「ホーム」の「オプション」から「リボンのユーザー設定」をクリックし、「開発」タブを有効化する
- 「開発タブ」から「マクロの記録」をクリックする
- 操作を行い、記録内容を保存する
- 記録したマクロを「マクロ一覧」から実行する
下記は、Macro1を選択
効率的に作業を進められるだけでなく、ミスの防止にもつながります。
マクロ記録とVBAの活用例
マクロ記録とVBAは、エクセルでの定型業務を効率化するだけでなく、複雑な操作も手軽に自動化できる便利な機能です。
以下に、具体的な活用例をいくつか紹介します。
活用例 | 概要 |
---|---|
複数シートのデータ集約 | 複数のシートに分散しているデータを1つのシートにまとめる作業を自動化します。 |
定型フォーマットのレポート作成 | 決まった形式のレポートを作成するプロセスを記録し、ボタン1つで作業を完了させることが可能です。 |
データの条件付き抽出と整理 | 特定の条件に一致するデータをフィルタリングし、別のシートに転送するプロセスを自動化します。 |
メールの一括送信 | エクセルのデータをもとに、Outlookと連携して複数の宛先に自動的にメールを送信します。 |
データの並び替えと重複チェック | データを指定した条件で並び替えたり、重複データを検出して削除する作業を効率化します。 |
機能を業務に取り入れることで、時間の節約や作業精度の向上が期待できます。特に、定期的に発生するルーティン業務を自動化することで、より重要なタスクに集中できる環境を整えることが可能です。
その他のExcelの機能について知りたい方は、下記をご覧ください。
エクセル機能を活用して業務効率を向上させよう
エクセルの多彩な機能をマスターすれば、日常業務から高度なデータ分析まで、さまざまなタスクを効率化できます。
特に条件付き書式やピボットテーブル、マクロといった機能を活用することで、データの視覚化や自動化が可能になり、業務の正確性とスピードを向上させることができます。エクセルのスキルを磨き、日々の業務をより快適に進めましょう。
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